「――おい、何やってんだそこ」
後ろを振り向くと、長官級の皆様が座る社長椅子に腰かけている王子とちゅうじんが視界に入った。
「1回ぐらいこういうお偉いさんが座る椅子に座って見たかっただよな~」
「分かるぞ。やっぱり長官クラスになるとふっかふかだな」
ちゅうじんは社長椅子の背もたれに背を預けながら、感動したような声を上げている。
王子は社長椅子に座りながら、優雅に足まで組んでやがる。癪に障るが、王子は妙に貫禄があるな……。
顔を引き攣らせていると、海希が王子の方に近づいた。
「次、俺座ってもええ?」
「おう、座れ座れ~。こんな機会滅多にないからな」
王子は
「王子とちゅうじんはまだ分かる。そう言う奴だからな。なんで海希まで乗ってんだよ⁉」
「元々お前みたいな真面目キャラとちゃうし? なんならおふざけキャラの方が性に合っとるしぃ?」
海希は、持っていた刀を机に立てかけてドカッと黒塗りの椅子に腰かける。こいつらもうすぐ粛清対象が来るってのに、緩みすぎだろ……。俺は額に青筋を浮かべながら、大きく口を開けて息を吸う。
「おい、テメェら全員いい加減にし――」
そう言いかけたところで、ぞわっとした気配を扉の向こうから感じる。
「来るっ……!」
呟いた瞬間、さっきまでのおふざけムードは何処へやら、室内に一気に緊張が走る。
直後、会議室の扉が開き、審議官が入ってきた。その手には真っ赤に染まった書類が握られている。扉を閉めると同時に、審議官は俺たちに気づく。
「おや、SSの皆さんではありませんか。どうしてここに? 今日は長官たちがいらっしゃるはず……」
「長官たちならここにはいませんよ。今日は貴方を捕えに来たんです」
俺が話すと、審議官の目に一瞬、動揺が走った。だが、すぐに目を細めながら笑みを浮かべる。
「ほう、私がいつ捕まるようなことをしたと?」
随分余裕そうな態度だ。
だが、それもこれを見れば一変するだろう。俺が王子の方に視線を送れば、王子は一歩前に出て書類をひらひらと見せびらかす。
「そんなの10年前からに決まってるじゃないですか。ほら、ぜーんぶここに書いてありますよ。何なら読み上げましょうか? 2016年4月・観文省職員に成りすまし、不法入省。だいぶ飛ばして2024年、長官戦略室資料室への不法侵入及び、重要機密書類の閲覧。その他にも色々やらかしてるみたいですけど……」
王子が書類に書いてある文面をいくつかピックアップして読み上げていけば、どんどん余裕ぶっていた審議官の表情が崩壊していく。
と、王子が新たなる書類を封筒の中から出して、審議官に見せた。
「2026年7月・長官並びに長官戦略室メンバー暗殺計画書。これが今回、俺たちが動くことになった何よりの証拠だ」
「な、何故、お前たちがそれを……」
審議官は目を丸くして、言葉を失う。
すると、海希がニヤリと笑みを浮かべたかと思ったら、前に出て喋り始めた。
「いや、偶然審議官殿のオフィスを掃除してた清掃員が見つけてしもてな? 日輪の方に送られてきたんよ。今こっちの手元にあるんはコピーしたもんやけど、現物の方はしっかりうちの方で押さえさせてもらっとる。今頃、俺の仲間が更なる証拠を漁りにあんたのとこのオフィス並びに住居に向かってるはずやで。祟魔さんや」
「だ、誰が祟魔だって? 私はれっきとした人間だぞ? 見れば分かることだ。それに、これら全ての行為は祟魔にそそのかされてやっただけで私は何も悪くな――」
「――その手に持ってるものが何よりの証拠だぞ」
ちゅうじんは審議官の持っている書類を指さした。狼狽えている審議官はそっと持っていた書類に視線を落とす。と、その目が見開かれた。
「なっ、書類が赤く染まって……」
「その文面に使われている用紙は祟魔が放つ祟痕にのみ反応するもの。よって、貴方が祟魔だということは丸わかりなわけです」
俺が懇切丁寧に説明を付け加える。審議官は最初の余裕は何処へやら、額には大量の汗を滲ませている。
こりゃ、そろそろ潮時だな……。
俺は見切りをつけ、腰に差していた太刀へ手を掛ける。
「ってわけなんで、大人しくお縄に着きやがれ!」
「そうはいくか……!」
俺が駆け出すと同時に、審議官は持っていた書類を放り投げ、扉の方へ一直線に走り出す。俺は落ちた書類を拾って、海希へ投げ渡し、追走する。
その間に審議官が扉の取っ手に手をかけて開けようとするが、ガチャガチャという音しかならず、一向に扉は開かない。
「な、何⁉」
その間にも、俺に続いてちゅうじん、海希と室内にいた面々が審議官の方へ歩みを進める。と、ちゅうじんが光線銃を審議官の方に構えた。
「もう逃げられないぞ。その扉はセキュリティルームにいる室長が施錠したからな」
「チッ。……こうなっては仕方ない」
窮地に陥った審議官が舌打ちをしたかと思えば、彼を中心に突風が吹き、視界が奪われる。次に瞼を開けたら、審議官からは大量の邪気を纏った祟気が溢れて出ており、髪は黒から赤に、額には角が生え、目が赤く染まっていた。
「この場にいるお前らだけでも始末してやる……!」
手に4尺はあろう金棒を出現させた審議官――いや、赤鬼は1番近くにいた俺へ襲い掛かってきた。
後ろを振り向くと、長官級の皆様が座る社長椅子に腰かけている王子とちゅうじんが視界に入った。
「1回ぐらいこういうお偉いさんが座る椅子に座って見たかっただよな~」
「分かるぞ。やっぱり長官クラスになるとふっかふかだな」
ちゅうじんは社長椅子の背もたれに背を預けながら、感動したような声を上げている。
王子は社長椅子に座りながら、優雅に足まで組んでやがる。癪に障るが、王子は妙に貫禄があるな……。
顔を引き攣らせていると、海希が王子の方に近づいた。
「次、俺座ってもええ?」
「おう、座れ座れ~。こんな機会滅多にないからな」
王子は
「王子とちゅうじんはまだ分かる。そう言う奴だからな。なんで海希まで乗ってんだよ⁉」
「元々お前みたいな真面目キャラとちゃうし? なんならおふざけキャラの方が性に合っとるしぃ?」
海希は、持っていた刀を机に立てかけてドカッと黒塗りの椅子に腰かける。こいつらもうすぐ粛清対象が来るってのに、緩みすぎだろ……。俺は額に青筋を浮かべながら、大きく口を開けて息を吸う。
「おい、テメェら全員いい加減にし――」
そう言いかけたところで、ぞわっとした気配を扉の向こうから感じる。
「来るっ……!」
呟いた瞬間、さっきまでのおふざけムードは何処へやら、室内に一気に緊張が走る。
直後、会議室の扉が開き、審議官が入ってきた。その手には真っ赤に染まった書類が握られている。扉を閉めると同時に、審議官は俺たちに気づく。
「おや、SSの皆さんではありませんか。どうしてここに? 今日は長官たちがいらっしゃるはず……」
「長官たちならここにはいませんよ。今日は貴方を捕えに来たんです」
俺が話すと、審議官の目に一瞬、動揺が走った。だが、すぐに目を細めながら笑みを浮かべる。
「ほう、私がいつ捕まるようなことをしたと?」
随分余裕そうな態度だ。
だが、それもこれを見れば一変するだろう。俺が王子の方に視線を送れば、王子は一歩前に出て書類をひらひらと見せびらかす。
「そんなの10年前からに決まってるじゃないですか。ほら、ぜーんぶここに書いてありますよ。何なら読み上げましょうか? 2016年4月・観文省職員に成りすまし、不法入省。だいぶ飛ばして2024年、長官戦略室資料室への不法侵入及び、重要機密書類の閲覧。その他にも色々やらかしてるみたいですけど……」
王子が書類に書いてある文面をいくつかピックアップして読み上げていけば、どんどん余裕ぶっていた審議官の表情が崩壊していく。
と、王子が新たなる書類を封筒の中から出して、審議官に見せた。
「2026年7月・長官並びに長官戦略室メンバー暗殺計画書。これが今回、俺たちが動くことになった何よりの証拠だ」
「な、何故、お前たちがそれを……」
審議官は目を丸くして、言葉を失う。
すると、海希がニヤリと笑みを浮かべたかと思ったら、前に出て喋り始めた。
「いや、偶然審議官殿のオフィスを掃除してた清掃員が見つけてしもてな? 日輪の方に送られてきたんよ。今こっちの手元にあるんはコピーしたもんやけど、現物の方はしっかりうちの方で押さえさせてもらっとる。今頃、俺の仲間が更なる証拠を漁りにあんたのとこのオフィス並びに住居に向かってるはずやで。祟魔さんや」
「だ、誰が祟魔だって? 私はれっきとした人間だぞ? 見れば分かることだ。それに、これら全ての行為は祟魔にそそのかされてやっただけで私は何も悪くな――」
「――その手に持ってるものが何よりの証拠だぞ」
ちゅうじんは審議官の持っている書類を指さした。狼狽えている審議官はそっと持っていた書類に視線を落とす。と、その目が見開かれた。
「なっ、書類が赤く染まって……」
「その文面に使われている用紙は祟魔が放つ祟痕にのみ反応するもの。よって、貴方が祟魔だということは丸わかりなわけです」
俺が懇切丁寧に説明を付け加える。審議官は最初の余裕は何処へやら、額には大量の汗を滲ませている。
こりゃ、そろそろ潮時だな……。
俺は見切りをつけ、腰に差していた太刀へ手を掛ける。
「ってわけなんで、大人しくお縄に着きやがれ!」
「そうはいくか……!」
俺が駆け出すと同時に、審議官は持っていた書類を放り投げ、扉の方へ一直線に走り出す。俺は落ちた書類を拾って、海希へ投げ渡し、追走する。
その間に審議官が扉の取っ手に手をかけて開けようとするが、ガチャガチャという音しかならず、一向に扉は開かない。
「な、何⁉」
その間にも、俺に続いてちゅうじん、海希と室内にいた面々が審議官の方へ歩みを進める。と、ちゅうじんが光線銃を審議官の方に構えた。
「もう逃げられないぞ。その扉はセキュリティルームにいる室長が施錠したからな」
「チッ。……こうなっては仕方ない」
窮地に陥った審議官が舌打ちをしたかと思えば、彼を中心に突風が吹き、視界が奪われる。次に瞼を開けたら、審議官からは大量の邪気を纏った祟気が溢れて出ており、髪は黒から赤に、額には角が生え、目が赤く染まっていた。
「この場にいるお前らだけでも始末してやる……!」
手に4尺はあろう金棒を出現させた審議官――いや、赤鬼は1番近くにいた俺へ襲い掛かってきた。
