君と見た朝焼けを永遠に残したかった

深山くんの絵のモデルになることになったものの、少し照れる。
他の人にじっと見つめられるのはなんだかくすぐったくなるようだ。

東京から薄ケ雪に引っ越してきて、やっとここでの生活に慣れてきた気がする。
いい意味でも悪い意味でも思ってた生活とは違ったけどね。

東京にいたころと比べると、穏やかな生活ができていると思う。

東京で生まれて、普通に小学校に行って、普通に中学校に進学した。
そこまでは良かったんだけどさ、中学校に入ってから、学校で居心地が悪くなったんだよね。
ほら、思春期だからさ、色んなもので頭の中がいっぱいになってさ、人とぶつかったりすることもあったよ。
誰にでもあることだと思う。
でもさ、やっぱり馴染めなかったな。
ほら、女の子って自然と群れるじゃん?
小学校高学年くらいから3~5人くらいのグループが自然にできるじゃん。
私もそういうグループに属してた。
みんな他の人を褒めてるのか遠回しにdisってるのかわかんない発言ばかりしてた。
私もそうだった。なのに、ある日突然、そういうのしたくないなって思ったの。
急にいい人ぶりはじめた。そうなってからは褒めてる風disりみたいな空気になったら曖昧な反応してたんだけど、そのあとは自然と自分が属してたグループから距離をおくようになった。
空き時間には外の景色を眺めたり、本を読むようになった。
本は好きだから、一人でいても、充実してた。
わざわざ話しかけてくる人もいなかったし。
でもなんか、元いたグループの子達が、急に付き合い悪くなった私の悪口を言ってるんじゃないかって思ってしまうようになった。
誰も話しかけてこないし、そんな噂も聞かなかったから、本当に私の思い込みなんだけどね。
そこからはおなかが痛くなったり体調が少しずつ悪くなって、学校を休む日が増えた。
わかりやすくいじめられてたとかではないんだけど、やっぱ居心地悪くなっちゃって。
中2の夏休み明けにはすっかり不登校になっていた。
お母さんとお父さんには正直に話したんだ。
いじめられてるわけじゃないけどなんとなく居心地が悪くて、学校に行くとおなか痛くなっちゃうから行きたくないって。
そうしたら、学校に行かないことを許してくれた。
その代わり、家でもちゃんと勉強をすることと、将来に関わる大事なことだから、高校受験についてはちゃんと考えてねとお母さんに言われた。
やっぱり生活リズムが崩れてきてしまった。夜眠れないことが増えた。
深夜にリビングでお父さんとお母さんが私のことについて毎晩話をしているようだったから、夜にリビングには行かないようにした。
うちは共働きで、両親ともたくさん稼ぐパワーカップルだ。
なので平日家には私以外誰もいなかった。
中学生にもなったんだから家事ぐらい一人でできた。
気が沈んで、寝込む時間が増えた。
休日でも昼間は寝込んでいる。
お母さんが精神科に連れていってくれた。
睡眠薬をもらって、少しずつ昼夜逆転を直していった。
勉強は自分でできるだけ頑張った。わからないところはお父さんが教えてくれた。
気づけば中3になっていた。
あの時群れてたみんなどうしてるかな。クラスバラバラになったかな。
色々思うことはあったけど、今更学校に行く気はなかった。
気が重いけれど、高校受験模試には頑張って行った。
同級生と会いたくないから、会場は少し遠いところにした。
東京都内の私立の進学校にギリギリ入れそうだった。
もう少し勉強頑張ろうと思った。
夜普通に眠れるようになってきたんだけど、たまに夜中トイレに行こうとすると、リビングからお父さんとお母さんが口論している声が聞こえて来るようになった。
聞こえないふりして足音を立てないように自室に戻る。
なんやかんやであっという間に受験シーズン。
お父さんとお母さんが見送ってくれた。
人が多くて緊張したけど、なんとかやり切った。
無事に合格した。お父さんとお母さんも大喜びしてくれた。
中学の卒業式、出席しなかった。
卒業証書はお母さんが取りに行ってくれた。
お母さんに申し訳なさを感じるけれど、ほっとした。
もう中学校に行かなくて済む。
高校にはちゃんと通いたい。
高校への入学準備をゆっくりと進めていたころ、お父さんとお母さんから離婚することを告げられた。
学校で変な噂を立てられないように私が中学校を卒業するまで待ってくれてたんだって。
離婚する理由は聞けなかった。聞く勇気がなかった。
まあ私のことで離婚するんだろうなとはなんとなく思った。
私はこの家でお父さんと生活することになった。
高校にも近いし。
お母さん、お母さんはわたしのことどう思ってる?
お父さんも、わたしのことどう思ってる?
聞けなかった。
高校に入学した。
最初は普通に通えてた。
やっぱり体調が悪くて病院に行った。
私、内臓が悪いんだって。
専門医に見てもらった方がいいって言われた。
近くに専門医がいないから、通える範囲の病院に専門医がいないか探さないといけないみたい。
お父さんは悲しんでた。
お父さんの実家があったところの近くに専門医がいる総合病院があるみたい。
そこに行こうかという話になった。
東京から地方に引っ越すってこと?
折角高校に受かって脱不登校したのにな。
お父さんだって、東京で長く勤めてる仕事があるから今更転職するのはやめといたほうがいいんじゃない?
お父さんは、会社と話し合って、地方の支社に転勤できないかかけあってくれた。
薄ケ雪ってところらしい。お父さんが育った町だ。
すぐには難しいから、高2になるころに引っ越すことになった。
学校では特別仲のいい人も仲が悪い人もいなかったからあっさりとした別れだった。