次の日からも、私たちの「秘密の時間」は続いた。
学校にいる間、私と深山くんは徹底して他人だった。
すふと窓際に目をやると、深山くんは一人で席に座り、ぼんやりとグラウンドを眺めていた。
クラスの誰かが「あいつ相変わらず何考えてるのかわかんねえな。」と囁くのが聞こえる。
放課後のチャイムが鳴ると、私は教室を抜け出した。
制服のまま、誰もいない通学路を駆け抜ける。
アスファルトを踏みしめるたび、胸のつかえが少しずつ取れていく気がした。
海岸へと続く道を抜けると、潮の匂いが一気に鼻腔をくすぐる。
すでに深山くんはそこにいた。防波堤に腰掛け、先日画材屋で買ったという油絵具のチューブを、夕暮れの光にかざして眺めている。
「深山くん!」
息を弾ませ駆け寄ると、深山くんは驚いたように顔を上げ、すぐにいつもの落ち着いた表情に戻った。
「早いね、入江さん。」
「うん。走ってきたから。」
靴を脱いで砂浜に下りると、冷たい砂が足裏に心地よい。
私は深山くんの横に腰を下ろし、膝を抱えた。
