君と見た朝焼けを永遠に残したかった


僕は慎重に、チューブをひとつひとつ手に取る。
鮮やかだがどこか温かみのあるウルトラマリン。透明度が高く、澄み渡る空のようなフタロブルー。そして、深く沈み込むようなインディゴ。

指先で金属チューブの冷たい重みを感じながら、チューブのラベルに描かれた顔料番号や透明度の表記を確かめる。絵の具を混色した時の濁りや、オイルが乾いたあとの塗膜の深みを頭の中で何十回もシミュレーションした。

「慧、まだ悩んでいるのか?俺絵ほぼ描かないから絵の具の違いがよくわからなくて……。」

いつの間にか後ろにいた新がカゴの中を覗き込んできた。

「……全然違う。光の透け方も、重ねたときの発色も。」

「出た。慧のこだわりモード。でもさ」

新は少しだけ声を落とし、いたずらっぽく笑った。

「部活辞めてからしばらく経つけど、またでっかいキャンバスに向かう気になったか?絵、続けてるんだろ?」

「うん。細々と。描いてはみてる。」

慧は視線を逸らし、選び抜いた絵の具を持ってレジへと向かった。

レジで会計を済ませ。茶色のクラフト紙の袋を受け取る。ずっしりとした絵の具の重みと油彩特有のオイルの匂いが手のひらに伝わってくるようだ。

「じゃ、行こうぜ。」