君と見た朝焼けを永遠に残したかった


「……下手くそって言いたいなら、言ってもいい。」
深山くんが少しだけ気まずそうにスケッチブックを閉じようとする。
私は慌ててその華奢な手に自分の手を重ね、制した。

「……下手じゃないよ。すごく、いい。」
私から笑顔が零れた。久しぶりの「本当の笑顔」だった。
作られた天真爛漫な笑顔ではなく。少し照れくさそうで、涙の跡が残る、素顔の微笑み。

深山くんは私の笑顔を一瞬だけ目を見開いて見つめ、すぐに少し恥ずかしそうに視線を海へと逸らした。

「学校では……あんまり話しかけないでね。」
深山くんはボソボソと呟く。
「入江さんの『お友達』に……変な目で見られる……。」

「ふふっ。なにそれ。」
瀬名はクスッと笑い、波打ち際を見つめた。

波の音が二人の沈黙を優しく包んでいた。