「深山くん、勝手に描かないでよ。」
なんだかおかしくてくしゃっと泣き笑いで呟いた。
深山くんは鉛筆動かしたまま、どこか申し訳なさそうに、でも穏やかに答える。
「…ごめん。でも、描きたいから。」
深山くんは描く手を止めない。紙の上を鉛筆がすべる音が、波音と心地よく重なっていく。
「えー。」
私は袖で涙を拭い、素直に笑った。
「綺麗だと思った。噓ついて笑う入江さんより、今のほうがずっと綺麗だ。だから、描かせてほしい。」
綺麗という言葉に、不意をつかれて胸が跳ねる。
よくそんな恥ずかしいことサラッといえるもんだなとも思った。
でも、お世辞や社交辞令でもない、ただ目の前の風景や光を切り取るような。彼の本音なのだろう。
返事に困ってしまい。黙ってしまった。
