君と見た朝焼けを永遠に残したかった


そっと深山くんに近づく、防波堤の段差に深山くんは座っていて、私に気づき、そっと見上げる。

「おはよう。そして久しぶり。」
深山くんが言った。
「おはよう。学校で話したことなかったね。」
私は深山くんの隣にそっと座った。

しばらくの間、黙って海を見つめていた。
深山くんはスケッチブックに向かう手を止めない。私は深山くんのスケッチブックに一瞬目をやり、また海へと視線を戻した。

「深山くん、こんな時間にいつも来てるの?」
「うん。この時間の海が一番好きだから。入江さんも早いね。」
「なんだかいまいち眠れなくて、目が覚めてしまって、来たの。」
「最近学校でうまくいかなくて、息苦しくなって、そうなると、海に来たくなったの。」

しばし沈黙が流れる。
深山くんはスケッチブックに向かう手を止めた。
「僕も。」

また沈黙が流れる。

その沈黙は私を否定も拒絶もしなかった。

東京や学校で感じていた何か話さなきゃという焦りが。波の音と一緒にスーッと消えていく。

波の音だけが沈黙を埋めてくれる。

「深山くん、誰もいない海って……すごく息がしやすいね。」

ぽつりと漏らされたその一言に、慧の胸が強く波打った。

深山くんは、はっとして私の瞳を見つめる。

「僕も。僕もだよ。」

水平線から差し込んだ一筋の光が、二人の足元と海の表面を金色に染めていく。
横顔を見ると、深山くんは眩しそうに目を細めていた。