潮凪高校に入学して一か月が過ぎていた。今は五月。 みんな学校生活にも慣れ始めた頃である。勉強はそこそこ出来ていた。 慧はというとどこの仲良しグループにも属さず一人でいた。 諦めがついていた。どこかのグループに属さないと生きていけないわけではない。 一人でいても困らなければそれでいい。 美術部はというと慧にとっての「自分の居場所」になりつつあった。 放課後になると一目散に美術室へ向かう。 自分の好きな絵を描いていても誰も邪魔しない。油絵具の匂いに心躍らせ、純粋に画面に向かっていられた。