追憶の夏 〜神社で出会った君とのこと〜(仮)

 8月17日、午前。
 この日は、簡薙村で行われるイベントの中でも1位2位を争うほどの大規模イベント、霊灯祭が行われる。お盆の時期に合わせて、遠い過去に簡薙村を支えてくれた先祖たちの霊を迎える夏祭りである。毎年、村の中心部では提灯や灯篭といった飾り付けが成され、屋台も大量に出店される。村の外からも観光客が訪れ、村は大きな活気に包まれる。とはいっても、近年は屋台の減少や観光客の著しい減少が見られているらしい。
 そんな祭りの前に、俺たちは俊道の家に集まっていた。
「…みんな集まってくれてありがとね」
「良いってことよ、としみー」
 俊道の母親は村の外で料亭を営んでいて、霊灯祭では例年焼きそばの屋台を出している。しかし料亭のスタッフが体調不良により欠員しており、このままでは屋台運営が厳しいということで俺たちが借り出されたというわけだ。
 俊道から相談を受けたとき、以外にも夢香も時音もやる気に満ちていた。夏祭りの屋台の手伝いという非日常に溢れた体験に、俺たちは心を躍らせていたのかもしれない。ちなみに柴戸はまだ俊道たちの前には現れるつもりは無いらしく、誘ったが断られてしまった。
「それじゃ早速、テントの組み立て作業をやるみたいだから広場の方に行こうか」
 俊道の家を出て、広場へと向かう。ここから広場へは、道路に沿って10分ほど歩くと着く。
 幸いにも、今朝はまだそれほど気温が上がっておらず、半袖シャツ1枚で心地よく過ごせる気温だった。
「時音ちゃんは、霊灯祭見るの初めてだよね?」
 そうか、夢香たちは時音の正体を知らないのだった。4人で探検活動を進め、こうして祭りの手伝いまでしているのに俺らの間で時音の認識に齟齬があるということに、少しだけ複雑な気持ちを覚えた。
「実は小さい頃に、何回か遊びに来たことあるんだ~。りんご飴とかチョコバナナとか美味しかったよ」
「なるほど~…って、食べ物のことばっかじゃん!」
 そんな会話を交わしながらあぜ道を歩いていると、広場が見えてきた。
「あらこんにちは。突然のお願いになっちゃって本当に申し訳ないけれど、今日はよろしくね」
 広場に着くなり、俊道の母親の森山冴子さんに出迎えられた。今日はよろしくお願いしますと口々に挨拶をする。
 屋台のテントを設営するために、いくつかの支柱やテーブルを運ぶ。
「あなた、転校生だったっけ?祭りの手伝いをしてくれるなんて偉いわねぇ」
「はい、転校生です!昔霊灯祭に来たことがあって、いつか手伝ってみたいなって思ってたんです」
 作業をしていると、祭りの実行委員の腕章を付けた大人たちに声を掛けられている時音が目に入った。
 何やら話が盛り上がっているようで、時音と話している大人たちは皆笑顔を浮かべていた。時音のコミュニケーション能力を羨ましく思うと同時に、イベント事における村人との温かい交流は、田舎の大きな特権だなとも思う。
 何年先でもこのような景色が色褪せない村。それこそが、時音たちの守りたいものなのだろう。
「虹輝、ボーっとしてないでそれ運んでくれよ…」
「あ、ごめんごめん」
 本格的に暑くなるまでに力仕事は粗方終えておきたい。俺たちは、作業の続きへと戻った。
 
「ふぅーっ、設営完了!」
 大人も子供もみんなで協力した結果、テントの設営などの下準備が全て終わった。時計の針はちょうど12時を回ろうとしていた。
 達成感に浸る俺たちに、冴子さんが声を掛けてくれた。
「みんな、協力してくれてありがとう。夕方17時までは自由にしてて大丈夫だからね」
「良いんですか?焼きそばの材料の用意とかあるんじゃ…」
「そこは私たちでどうにかなるから。高校生の皆はゆっくり休んでおいて!」
「「ありがとうございます!!」」
 昼時の仕事を終え、幸運にも夕方までは自由時間となった。
 夢香は家で浴衣に着替えたいらしく時音も何やらやりたいことがあると言うので、そこからは一旦解散することになった。時音が一体何をやろうとしているのかこっそり聞くと、
「暑い中山で作業している剛の手伝いに行こうと思ってる。今日はちょっと剛と話すことがあるから、