五月に入るとすぐに陽菜子は、自宅近所の書店でアルバイトを始めたらしい。
二日目にして担任の間瀬に見つかったが、問題にされていないようで、「間瀬って良いやつなのかな」なんて言っていた。お気楽なものだ。
「なんてことがあってさ」
「そうなの? あの先生、春休みに電話越しに話をしただけだったけど、あまり良い先生って感じではなかったけどね」
夕食はお母さんと二人で食べることが多い。お父さんは、夜の八時過ぎに仕事から帰ってくる。あとでお母さんと二人で話をしながら食べることが多い。たまには私も話に加わるけど。
サラダをつつきながら、私は陽菜子のことを話した。四月に陽菜子と話すようになった頃、家では話題に出さなかった。陽菜子が、いつ私に飽きるか分からなかったからだ。友達ができたことでお母さんを一喜一憂させることは悪いと思って、二人の関係が安定するまで黙っていた。
私は雨の日が待ち遠しい。陽菜子と一緒に過ごす時間があるから。陽菜子も同じように思ってくれているだろう。互いに、二人で過ごす時間が愛おしかった。
「でも、由衣が友達を作るなんてね」
「意外だった?」
「意外というより、嬉しいよ」
「友達を作ったことが?」
「そう。友達がいなくても、由衣なら生きていけると思う。だから、それでもいいとは思っているけれど、原因が原因だからなぁ」
お母さんは、私が美佳に裏切られたことも知っている。その過去を知った上で、友達を作らなくてもいいと言い、今は陽菜子の存在が嬉しいと言ってくれていた。
「わたしはさ、前にも話したけれど、由衣が選ぶことが嬉しいの。だから、今回も友達ができたと言うより、選択をしたことが嬉しい。あんなことがあったから、由衣が友達を作るという選択肢を始めから諦めているのなら、それは……少し悲しいかなって。だから、友達ができたことより、選択できるような心の状態になったってことが私は嬉しいよ」
お母さんはいつも私が選ぶことに喜びを感じてくれる。もしかしたら、また裏切られるのではないかという心配はしていない。そんなところに、お母さんから私や陽菜子への信頼を感じていた。
もうすぐ六月がやってくる。梅雨の季節だ。こんなにも六月が待ち遠しくなる年は初めてだとカレンダーを眺めながら思った。
二日目にして担任の間瀬に見つかったが、問題にされていないようで、「間瀬って良いやつなのかな」なんて言っていた。お気楽なものだ。
「なんてことがあってさ」
「そうなの? あの先生、春休みに電話越しに話をしただけだったけど、あまり良い先生って感じではなかったけどね」
夕食はお母さんと二人で食べることが多い。お父さんは、夜の八時過ぎに仕事から帰ってくる。あとでお母さんと二人で話をしながら食べることが多い。たまには私も話に加わるけど。
サラダをつつきながら、私は陽菜子のことを話した。四月に陽菜子と話すようになった頃、家では話題に出さなかった。陽菜子が、いつ私に飽きるか分からなかったからだ。友達ができたことでお母さんを一喜一憂させることは悪いと思って、二人の関係が安定するまで黙っていた。
私は雨の日が待ち遠しい。陽菜子と一緒に過ごす時間があるから。陽菜子も同じように思ってくれているだろう。互いに、二人で過ごす時間が愛おしかった。
「でも、由衣が友達を作るなんてね」
「意外だった?」
「意外というより、嬉しいよ」
「友達を作ったことが?」
「そう。友達がいなくても、由衣なら生きていけると思う。だから、それでもいいとは思っているけれど、原因が原因だからなぁ」
お母さんは、私が美佳に裏切られたことも知っている。その過去を知った上で、友達を作らなくてもいいと言い、今は陽菜子の存在が嬉しいと言ってくれていた。
「わたしはさ、前にも話したけれど、由衣が選ぶことが嬉しいの。だから、今回も友達ができたと言うより、選択をしたことが嬉しい。あんなことがあったから、由衣が友達を作るという選択肢を始めから諦めているのなら、それは……少し悲しいかなって。だから、友達ができたことより、選択できるような心の状態になったってことが私は嬉しいよ」
お母さんはいつも私が選ぶことに喜びを感じてくれる。もしかしたら、また裏切られるのではないかという心配はしていない。そんなところに、お母さんから私や陽菜子への信頼を感じていた。
もうすぐ六月がやってくる。梅雨の季節だ。こんなにも六月が待ち遠しくなる年は初めてだとカレンダーを眺めながら思った。
