花火大会後の駅はやっぱり混んでいた。なんとか電車に乗り、共に並んで電車の座席に座った。と胸の鼓動が乱れるようなことと人ごみのせいですっかり疲れてしまい。気づけば、左にいる樹の方にもたれていたみたいだ。着いた頃には、樹の声で目が覚め、パッと見ると樹の方にもたれていた。

「ごめん、寝てた!」と慌てて起きて樹の肩から離れる。

「いいって、疲れたしな、なにより陽菜可愛かったし」と少し照れ、頬を指でポリポリとかきながら言ってくる。

「え、樹起きてたの、てっきり寝てたかと」と慌てて声がどもる。

「起きてたよ、両方寝て寝過ごしたらやばいだろ?」

「そ、そうだけど」

 ごもっともすぎて何も言えない。これで樹も寝てたらばれずに済んだのにと願っていたのだがまさか起きていたとは。

「まあ、いいってかわいい彼女の寝顔をも見れたことだし」

 とお得意のニタッとした笑みを浮かべて言ってくる。そしてその響きは照れ臭いものだが、嬉しかった。

「あ、ありがと。」

「じゃあさ、家まで送ってくよ、暗いしさ」

「いいよ、そんな遠くないし。申し訳ないよ」

 と伝えるが

「いいって、それにまだ陽菜といたいし。」

 恐らく、樹のことだから無意識にこうやって気持ちを伝えてくれんだろう。キスだって、手を握ることだって全部樹からだ。自分からは素直になれてない。

 暗い道を互いに手をつなぎながら歩いて帰る。

「痛っ、」

「ん?どうした?」

「下駄、慣れないせいで足が痛くて」

 ふと、足を見ると鼻緒のところがすれて真っ赤になってる。自分でいうのもあれだが見るからに痛そうだ。

「仕方ねぇな、ほら」

 樹はそう言って、私の前に屈み背中を見せる。それはおぶってやるということなんだと分かった。

「い、いいよ、樹疲れてるし。それに私重いよ。」後半はごにょごにょッと言ってしまったが、残念ながらこれも事実だ。彼氏ができたんだからダイエットくらいしとけばよかったと心から後悔する。

「いいって、家あと五分くらいだろ?それに、言ったろ、俺筋トレしてるって。なにより、その足だと歩くのきついだろ?ほら」と手をひょいひょいと揺らし乗れと合図してくる。

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 と恐る恐る乗る。

「重っ」

「え、う、うそごめん降りるね!」と慌てていると樹が吹いた。

「冗談だって、軽いよ。陽菜が可愛いからちょっとからかっただけ。」

「も、もうー」

「ハハハ、わりーって、ゲホッ、ゴホッ。」

 突然樹が咳をした。

「樹大丈夫?」

 しばらく呼吸を落ち着かせて樹は言う。

「ゲホッ、わりぃ唾が変なとこ入った」

「もう、心配して損したー。」と冗談と半分で怒る。

「え、心配してくれたの嬉しいなー可愛い彼女が心配してくれて。」

 そういって笑うから何も言い返さくなってしまった。

 その後数分何も言えずにお互いる。でも、樹の背中は思ったより大きくて、温かくて、何よりたよっ利害があった。今日、気づけば樹に伝えてもらってばっかりだ。私は照れて何も伝えられてない。だから、「よし」と心で覚悟を決めて樹の耳元に顔を寄せて言った。

「樹の浴衣ぶっちゃけかっこよかった。」

 恥ずかしくて、少し小声になってしまったが言えたからひとまずは良しとしよう。

 そう伝えた瞬間、樹の足が止まる。

「ちょ、急に何言うんだよ、寝ぼけてんのか?」

 樹は思いっきり動揺してる。そんな樹が可愛かったからか、それとも一度伝えてハードルが下がったのか、言葉を続けた。

「ほんとだよ、今日伝えてもらってばっかだったし、それに樹のキスも手を繋いだことも嬉しかったし、正直ドキドキしたんだからね。でもありがとう。」

 自分でもなんでこんな正直に想いが伝えられたのか分からない。でも、正直に想いを伝えてくれる樹といるとそんな気持ちにしてくれた。

「こ、こっちこそありがとな。」

 照れた樹は可愛かった。

「ふふふ、こちらこそ」

 今日の自分は少しおかしい、でも大切な人に正直に気持ちを伝えるって大切だなと改めて感じた。

 なんだかんだで家について、私を降ろしてくれた。

「じゃあな、帰ったら連絡する!」と手を振りながら帰ってく樹の背中を見つめながら手を振って

「ありがとーじゃあね」

 でも、連絡は来なかった。まあ、着替えて疲れて寝てしまったんだろうと気にしなかった。しかし、一週間も連絡は来なかった。それでも、あいつのことだからめんどくさいんだろと思って、気にしないふりをして過ごした。

 一週間後、自分のベッドでゴロゴロしてるとLINEの通知が鳴った。樹からだ。

「わりーあの日の後寝てて、なんやかんやめんどくさくて連絡してなかった」

 なんだそれと、思わず吹き出してしまった。でも、何事も無くてよかったと安心した。

「ううん、そんなとこだろって思ってた、何事もなかったみたいでよかった」と返信した。

 すると、すぐ返事が来て

「わりー、それでさ明後日からまたでーとしね?」と誘って来た。

「もちろん」その四文字だけ返すと眠ってしまった。その後も夏休みの間様々なデートをした、ピクニックで樹がサンドイッチ落としたり、、線香花火をしたり、映画を見に行ったりといろいろしてるうちに夏が終わった。夏休みの最後の日樹と水族館に行った。見た水槽はどれもきれいだった。そして、なぜかその日い樹はクラゲの水槽の前に止まってこんなことを言った。

「クラゲってさ最後は溶けて死ぬんだって、だから何も覚えてないし、痛くもないんだって」

 何でそんなことを言ったか分からない、でも、その樹の横顔はどこか儚かった。

 そして、帰り道またいつものように家まで送ってもらうと、樹はすぐに帰らずこう言った。

「陽菜、愛してる。」

「な、なに急に?どうしたの?」

「別に、陽菜、前線香花火してた時言ってくれたろ?正直に大切な人に思いを伝えるって大切だって。」

「そ、そうだけど。急だからびっくりして」

「なに?俺がかっこよすぎて動揺してる」

 としたからのぞき込んできてニタッと子供のように笑い、からかってくる。

「ち、ちがうし!でも嬉しかった。ありがとう」

 照れて目を見れなかったがそう伝えた。

「明日で約束二ヶ月だな。返事明日学校で聞かせろよな。」

「うん」

 そして、樹は背を向け帰って行く。

「い、樹!」

 呼び止めた。そして、思い切り深呼吸して伝えた。

「私も愛してる!また明日ね!」

 震える声で必死にそう伝えた。

 樹は聞くとニコッと微笑み

「おう、ありがとうな、じゃあまた明日!」

 こうして約束してた二ヶ月は経っていた。