あれから、数日学校に来ずとうとう夏休みになってしまった。LINEは時折やり取りしてるがあの日以来会えていない、なんやかんやもう2週間もたつのに。

「あーデート行きたい!!!」

「だから行けって言ってんじゃん」

「だって、樹ずっと体調悪いんだもん」

 暑い夏私は夏海の部屋のミニテーブルにうなだれておしゃべり兼愚痴ってた。

「さすがに2週間も風邪っておかしいでしょ?あ、まさか浮気とか?」

 夏海がニタニタしながらからかってくる。

「そんなわけない、、、もん」声が徐々に小さくなってく、なぜならあの日言われた「二ヶ月だけ」という言葉に軽さが含まれていたからだ。

「なに、まさか心当たりでもあんの?うわーごめん冗談のつもりだった」

「ううん、ただ」

「ただ?」

 あの時、樹「二ヶ月だけ」って言ってたから。なんか信用できないようなさー

「なにそれ?怪しさムンムンなんですけど」

「でもさ、樹ってそんあやつではないんよな、ふざけるけど根は誠実だし。」

「まあ、言われてみればそうよなーおかしいな」

 夏海も含め私たち三人は幼馴染だ。だからこそ、あいつの性格は夏海はもちろん熟知している。

「あ、じゃあさ突ろうよ!樹の家ここからすぐじゃん!」

「え、なんで?さすがにまずいよー」と私は怖気づくが、さすが男気ある夏海は思い立ったら即行動。ってなわけで半強制的に樹の家に向かった。

 樹の家の前に着くと、迷わず夏海がインターホンを押す。

「ちょ、ちょっと待って心の準備が!!」

 なんて言ってると少しやせた?ように見える樹が出てきた。

「おう、陽菜、夏海どうしたんだよ、いきなり来るなら言えよなー」

 私は何といえばいいかわからず、夏海の陰に隠れるが夏海が口を開く。

「あんたが彼女ほっぽって、2週間も会ってないっていうから、浮気調査―」

「ちょ、バカ、夏海ストーレートすぎ!」

 樹は何も言わず夏海の陰に隠れてる私を見てくる。

「わりー不安にさせて、お袋がさ安静安静ってうるさくてさ」と苦笑いを浮かべる樹はいつもの樹だった。

「ううん、こちらこそごめん急に、ってか樹少し痩せた?」

 夏海の陰から徐々に顔を出して、尋ねる。

「うん?あー少しな。いや、ほらさ、彼女出来たから少しかっこよくなりたくてさ?」とニヤッと笑い、力こぶを作り見せてくる。

「なにーあんたらアツアツじゃん、失礼しました、じゃあ私はこれで、バイバーイ」と夏海が駆けてく。

 すこし玄関にて気まずい時間が流れるが、私は改めて力こぶを見せ作る樹に思わず突っ込んでしまった。

「なにーいうてないじゃん?ってかむしろ前より減ってね?」

「なにいうんだよーこれでも、あー痩せて筋肉落ちたわ」といつものアホさ丸出しの樹に空気が和む。

「もう、バーカ筋トレしないとだめだよ」

「ハハハ、そうだな、まあ上がれよ、特に何もないけど話でもしようぜ」

 と家に招いてくれる樹、「おじゃましまーす」と上がるといつも明るい樹のお母さんが今日はダイニングテーブルで悲しそうにしてた。

 とはいえ、勝手に聞くのは失礼にもほどがあるので、何も聞かず樹とともに2回の樹の部屋に上がる。

 ドアが閉まると、思わず口が先走った。

「樹、お母さん大丈夫?なんか悲しそう」

 しまった、言ってから聞かなければよかったと思った、が出した言葉はもう戻せない。樹は少し気まずそうにしながら。

「あーなんか借金?系らしい俺もあんま詳しくなくてさ」と目が泳いでるがこれ以上深く詮索しなかった。

 その後樹の部屋の床でずっと喋った、他愛もない話を延々と、すこしすると樹が動いた。

「なーベッドこない?」とベッドにのって行ってくる。

「ば、ばか、何考えてるの?!」

 当然そう考える、だって恋人とベッドなんて。

「ち、ちげーよ疲れたから横にならねーってことだよ。あ、今お前変な想像しただろスケベ」

 と慌てて訂正しつつも樹はからかってくる。

「ち、違うし。そういうことだってわかってたし」

「ふーん、あ、そうまあ来いよ」

 お言葉に甘えて樹の横に横になる。樹は少し疲れてたみたいで横になると少しぐったりしてる。本当に疲れてたみたいだ、横になると話すつもりだったのに、樹はスヤスヤと眠ってしまった。起こすのも気の毒だしまだ病み上がりだからかなって思い少し寝かせて待つ。1時間もすると起きてきた。

「わりー寝てた。」

「いいの、疲れてたんでしょ」パタンと本を閉じてそう声をかける。

「まーな病み上がりだからかな?」

「そうだと思うよ、無理しないで」

 次の瞬間、寝たせいかさっきとは打って変わって元気になった樹ははしゃぎだす。

「なーこの夏はいーっぱいデートしようぜ!花火大会、夏祭り、海、カフェ、水族館、ピクニック、あとそれからー」

「ストップ、ストップ!詰め込めすぎじゃない?水族館とかは夏休み後でもいいじゃん、時間はたっぷりあるんだし」

 あまりのまくしたてに思わず止めてしまった。

「いや、だってさ俺たち二ヶ月しかないじゃん!二ヶ月」となぜか妙に二ヶ月を強調させてくる。

「なんで、そんなに二ヶ月を気にするの、そんなに私と別れたいの?、付き合う気無いの??」

「いや、まあ、ほらさ、あれだよ」

「もう、知らない!」とプイっとへそを曲げてしまう。

「わりーって、ただ二ヶ月のお試し期間にいっぱーい色々やってみてさ合うか知りたいんだけなんだって」

「もう、いい、わかった」怒りもあったけど、本当は半分は嬉しかった。幼馴染のせいなのか思考回路が似てるのか同じようなデートプランを考えてからだ。

「じゃあ、目一杯遊んで二ヶ月以降も付き合いたいって思わせるんだから!」と素直に気持ちを伝えられず、くどい言い方で伝えてしまう。

「わかった!ありがとう!ごめんな!じゃあさまず来週の7月7日の花火大会行こうぜ!」とスマホでサイトを見せてくるそれは全国的に有名な、約40,000発も上がる花火大会だ。

「いいよ、わたしも行きたかった!」さっきまでの怒りはどこへやら、すっかり乗り気になってウキウキと乗ってしまう。

「ほんと!?やったーじゃあ当日6時に駅まで集合な!」

「わかった!」この時私の頭の中は、何色の浴衣を着ようとか樹、喜ぶかなでいっぱいだった。

「浴衣、楽しみにしてるぞ!」と樹がニタッと笑って言ってくる。

「なんで、私の頭の中読んでるのよ!あ、」思わず考えてたことを図星で当てられて思ってたことそのまま口走ってしまう。同時にしまったと思って口を押さえる、自分でも顔が赤くなっていくのが分かる。

「さては、もうすでに考えてたとか?じゃあ楽しみにしてるぜ!」

「バ、バカ、ち、ちがうし、、、」と声が小さくなっていく、やっぱりこいつに嘘はつけないみたいだ。

 その日はもう日が傾いてきて、さすがに家に帰ることにした。でも、やっとデートの約束ができてうれしかった。本当に嬉しかった。好きなラブソングを口ずさみながら帰った。

 当日、朝の10時。

「お母さん、私の浴衣はー?」「帯どこー?」「おかあさん?」

 と朝からドタバタだった。慣れない化粧と浴衣に合う髪型を精一杯ネットで調べながらする。

 お母さんに着付けをしてもらい、「いってきまーす!」結局約束の時間ギリギリに家を飛び出る。

 慣れない下駄で慣れた道をかけてく。

 結局約束の時間5分前について、当然、樹は着いていた。

 背の高い樹は多くの人がいる駅までも一目でわかる。

「樹―」駆けて樹のもとに向かう。それがいけなかった。慣れない下駄で駆けたせいで樹の手前でつまずいてしまった。世界がスローモーションになる。私はこけて痛いとか血が出るより、あ、汚れたら樹とデートがとデートと浴衣の心配していた。

 こけると思って目を閉じるといつまで経っても堅いコンクリートや痛みを感じない。恐る恐る目を開けると私は温かくてそれでいて男性特有のがっちりとした腕の中にいた。

「あぶねー気をつけろよ」

 樹は私を抱きとめてそう伝えてくる。

「あ、ありがと」思わぬ状況に照れと情けなさから顔が赤くなってくのが自分でも分かる。

「いいって、それより行くぞ遅れるから」とこけた私が恥ずかしい思いしてるのを感じ取ったのか。あえて、触れずに電車に乗り花火大会に向かう。

 電車気が動転して乗るとさっきはこけた恥ずかしさと気が動転して見れなかったが、私の前に立つ樹の浴衣姿は思わずドキッとしてしまう。こんいろの淡い色生地に白い縦線が入った、落ち着いた雰囲気の浴衣には目が引かれるものがあったが、その気持ちを伝える余裕すらなく、十五分程揺られ、会場に着いた。さすが、日本一と謳われるだけある、花火大会とあって多くの人が会場に行き来している。

「なーまず何したい?」

 樹がそう語りかけてくる。久々の夏祭りと花火大会に思わず浮かれて、子供のようにはしゃいでしまう。

「じゃあ、まずは金魚すくいいこ!」と金魚すくいの屋台を指さし樹に言う。樹はクスッと笑い

「いいぜ、行こうぜ」と二人で金魚すくいをしに行く。

「おっちゃん、ポイ二つ」

 樹が注文してさりげなく二人分の料金を払ってくれる。

「ちょっと、いいよ自分で払うって」焦ってそう伝えると

「いいって、これくらい彼女の前だと少しはかっこつけたいじゃん」

 と樹は自分でいいながら恥ずかしくなったのか、顔が目に見えて赤くなってく。

「ふふふ、分かった、ありがと。」

 樹とともに並んで屈み、いつ以来かわからない金魚すくいをする。

「あ、逃げられた!ってかもう敗れたんだけど(笑)」と笑う樹は早々に金魚に逃げられて結局一匹も捕まえることもなく逃げられたらしい。

 私はというと

「陽菜、やっぱうめーな」

 そう私たちは幼いころ何度か夏祭りに出かけててその度に私が樹に勝ってた。けっきょく、 私は十六匹捕まえて、捕まえてもかわいそうだからといい全匹返した。その後も樹とともに綿あめを食べたり、射的をしたりして花火が始まる時間まで楽しい時間を過ごした。

「やべっ、花にもう始まる、行くぞ陽菜」

「ちょ、待ってよ」

 樹と違って背が低い私は人混みの中はぐれそうになってしまう。その時手首に温かく、大きい手がつかんでくるのを感じた。

「はぐれるからな、ほら行くぞ。とっておきの場所行こうぜ」

 樹はサラッと私の手を引いてとっておきの場所という場所に向かっていく。手を引かれ着いた場所は、人気がない林の先にある、人気のない丘だった。

 私の手首に樹の手は掴まれたままだった。うるさくて、聞こえそうな心臓の鼓動が聞こえそうで、それでも冷静を装いながら。

「よ、よく知ってるねこんな場所」

 あーバカ何冷静って言ってどもってるのよと自分の頭の中で自分に怒りながら返事を待つ。

「ま、まーな」

 樹の声もどもってて、パッと手を離される。その様子に思わず吹き出してしまう。なんだかんだ言って樹も同じなんだって少しほっとした。

「な、なに笑ってるんだよ!」と焦って返す樹がかわいかった。

 ドーン!

 そうこうしてるうちに一つ目のピンクと黄色とオレンジのの大きな花火が打ちあがる。

「あ、始まったな」二人で花火を眺める。

 少しすると、途中で手に温もりを感じた。手を見ると樹の手が繋がれてた。心臓の鼓動が再びうるさくなる。

 でも、それはうるさい花火のせいにして聞こえないふりをした。温かい手、目の間に広がるきれいな大きい花火。何もかもが、新鮮でうれしさで一杯だった。

 花火も後半に差し掛かると次々と赤や、オレンジ、青や紫と色鮮やかな花火がとめどなく上がっていく。

 次の瞬間手が離れ、

「陽菜」

 名前が呼ばれ振り返ると、唇に樹の柔らかく温かい唇が優しく重なる。後ろでは最後の特段と大きい花火が上がっていて、花火に負けないくらい大きい鼓動がかき消されていた。

 唇が離れて何が起こったかいまだに分かってないが、鼓動がまだうるさいことだけ、そして初めて樹とキスをしたという現実だけが頭の中でグルグルしていた。しばらく、お互い言葉が言えず静かな空気が流れていたが、先に口を開いたのは樹だった。

「は、花火綺麗だったな」樹も同様が隠せないのだろう。その声に動揺が表れている、まるで告白してくれたあの日のようだ。私はまたもあの時のように吹き出してしまう。

「ふふふ、そうだね綺麗だったね」

 それで樹も少し和んだのか、落ち着きを取り戻して何事もなかったかのように

「そうだな、遅いし帰るか」とともに駆けて上がってきた丘を再び降りてく、自然と樹が手を津直井出来てそのまま駅まで手をつないだままだった。