今日の目覚めは最悪だった。せっかく楽しい夢を見ていたのに、なんで1人だけ来なかったのかと矛先のない怒りをぶつぶつと言っていた。
夢は夢と割り切った方が良いのかもしれないが、そういうわけには行かない。なぜなら今日は、治療が終わった後に真二と会う約束をしているからだ。
会った時には夢の話をしようと心に決め、病院へと向かった。
今回は2回目ということもあり、リラックスして行うことができそうだ。前回は赤系統の色を観たが今日は黄色系統を観ていく。黄色系統は赤系統と違って温かったり、瑞々しいらしいのでどんな色合いなのか楽しみだ。
「瑠璃ちゃん久しぶり!久しぶりって言っても1週間ぶりくらいかな?」
今日の担当も春川さんらしく、彼女の元気な声が聞こえる。
「そうですね。今日もよろしくお願いします」
任せてね!という代わりに親指を立てて見せた。
春川さんが部屋から出ていくと、前回と同様に色覚補正コンタクトレンズを鏡を見ながら入れる。準備が整うとスピーカーが流れ、石田先生の声が流れる。
「鈴木さんこんにちは。体調はお変わりないですか?」
大丈夫です。と答えると、それは良かったです。と声が聞こえる。そして今回の治療の説明に入る。
「今回鈴木さんには前回お話しした通り黄色系統の色を観て頂きます。黄色、橙色、緑です。では始めていきましょう」
石田先生が操作しいてる機械音が響く。この音はどうもなれなくて、不安が膨れ上がる。慣れる日が来れば良いと切に願う。
「どうですか?鈴木さん観えますか?」
ゆっくり目を開けると前回とはまた違った色合いが広がっている。毎年夏になるとよく見かける花だ。
「これは…ひまわりですか?」
「そうだよ。正解だ」
沢山のひまわりが一面に咲いていたらどんなに素敵だろうと想像する。桜や紅葉とは違う素敵な色合いだ。春といえば桜、秋といえば紅葉と答えるように、夏といえばひまわりだ。みんなが口を揃えて「青空の下のひまわりは最高だ」という気持ちが分かった。青空があればまた違って見えたことだろう。
ひまわりの真ん中は前回習った茶色だった。知っている色が出てくると嬉しい。ひまわりの花びらと茎と葉は、まだ観たことのない色だ。でも、ひまわりの色合いは言葉としては知っている。分かると思った。
「えーと、ひまわりの花びらは黄色で茎と葉は緑ですよね?」
「そうだね。でも、茎や葉を黄緑色と表現するときもありますよ。まぁ、どっちが正解とかはないと思いますが」
次に写し出されたのは夕焼けだった。きっとこれは赤色と橙色だ。でも、それは大まかに分けた時はの話だ。きっと真二に言わせれば、茜色と雀色だろう。
私が黙っているので石田先生が声をかける。
「これは夕日ですがどうですか?私はどうも夕日を見ると寂しい気持ちになってしまいます」
その気持ちは分からなくもなかった。夕日を観ているとどこか寂しい気持ちになる。
「これは、赤色と橙色ですよね。でももっと詳しくいえば、茜色と雀色ですか?」
石田先生からの返事はなかった。私の声が聞こえなかったのかと思い、もう一度声をかけてみる。
「すみません。機械の不具合でスピーカーがちょっと変でしたね。失礼しました。茜色と雀色でしたっけ?よく知ってますね。最近の若いは知らない人が多いんですよ」
機械の不具合が治ってよかった。茜色と雀色は真二から教えてもらった色だ。最近まで私も知らなかったので、石田先生のいう最近の若い人は知らないというのは、あながち間違いではないと思う。
次の画像に写りますよという声と共に次はピーマンやきゅうり、ブロッコリーだった。お野菜がたくさん写し出されている。
野菜は緑色が多いと前に聞いたことがあるが、本当に多いのだと改めて実感する。小さい頃はピーマンが苦手でよく残していた。ピーマンの苦味がどうも小さい頃の私には合わなくて、食べるのに一苦労したのを覚えている。
「これは、緑色ですね。小さい頃ピーマンが苦手で、母親に全部食べなさいって怒られたのを思い出しました」
はははははは!と笑い声が聞こえる。
「小さい子はピーマンが苦手なんですよ。この病院に入院している、小児科の子供達もいつも残してる」
そうなんですね。私もつられて笑ってしまった。大きくなるにつれて私は食べられる事ができたが、中には大人になっても食べられない人がいるみたいだ。
次は、かぼちゃの写真だ。かぼちゃといえば私の中ではハロウィンが想像される。小さい頃地域の集まりで、お化けの格好をしてトリックオアトリート!と言ってお菓子をもらった。
その後かぼちゃ料理やお菓子などを食べて過ごした楽しい思い出だ。そんなかぼちゃは、どうやらオレンジ色をしているらしい。
私の中では、オレンジ色は美味しそうな色合いに見える。ただ単にかぼちゃが好きだからかもしれないが。
「どうやら私は食いしん坊かもしれないです。かぼちゃを見た時凄くおいしそうと思ってしまいました」
自分で食いしん坊と言っているが、実際他の人に知られてしまうのは恥ずかしい。
「そんなことありませんよ。赤やオレンジは食欲を増進させる効果もあるんです。きっと鈴木さんは初めてその効果を実感できたのではないですか?」
色にはそんな効果もあるのだと初めて知った。赤系統の色は温かく、青系統の色は冷たいと聞いたことはある。食べ物にまで影響していることには驚いた。
色彩や水彩、彩りなど色に関する言葉の中には彩という文字が入る。それはきっと料理にも使えることで、彩りを意識した料理が作れたらもっと美味しくご飯が食べられると思った。想像するだけではなく、実現させたいという気持ちが膨らむ。
想像していると、ぱっと次の画像に画面が動いた。表示されたのは、トラだ。獲物を狙っているかのように、目が鋭い。
このトラが何色をしているか観察するが何色をしているか、答えが出なかった。所々黒い模様が入っているのは分かるが、大まかな毛が黄色なのか橙色なのかはたまた茶色なのか…。
「トラって何色なんですかね。私は黄色にも見えるし、橙色、茶色にも見えたりします。トラはとても不思議な色合いを持っている動物なんですね」
「とても良いところに注目しましたね。日本人は主に黄色と答える人が多いんですよ。他の国ではトラと言ったらオレンジと答えます。まぁ、中には茶色と答える人もいますがね」
私が観えていた色は間違いではなかったのだと思い嬉しくなる。他国の人とでも観え方が変わることも私は知らなかった。知らないことが多すぎると実感する。
「では、今日は最後にこちらの画像を観て終わりにしましょう」
前回は桜の木のが最後だったが、今日は何かと期待してしまう。画面が切り替わり写し出された画像に動きが止まった。
それは、体育館の裏やこの病院の裏庭に立っているオークの木とよく似ていたからだ。
「これは、オークの木ですか?」
「ん?よく知っていますね。これはオームの木ですよ。この病院の裏庭にも立っていますが立派なものでしょう」
本当、立派に見える。学校にあるオークの木の下で由花が向田さん達に声をかけたり、病院の裏庭では真二に出会ったり…。最近の出来事は全部オームの繋がりで出来上がっている気がする。
オークの木を観たら真二に早く会いたいと胸がはやる。治療のために病院に通っているが、真二に会うのも最近の楽しみの一つだ。
「今日の治療はこれでお終いです。お疲れ様でした」
前回と同様に終わりのアナウンスが聞こえる。私はコンタクトレンズをケースにしまい、春川さんが来てくれるのを待つ。
「お疲れ様ー!今回は黄色系統の色を観たんだよね?どうだった?」
機械の装置を丁寧に剥がしながら私に声をかけてくださる。
「そうですね。今回は色の大切さを感じられた気がします。その状況ごとに色の使い分けとかできたらもっと素敵になると思いました」
嬉しそうに、うんうんと頷くと次で最後だけどどう?と訊かれる。
最後に青系統の色を観たらこの治療も終了する。最終段階は手術するかどうかだが、まだそこまでは決められない。私が俯くと春川さんは手をブンブン振って余計なこと訊いちゃってごめんねと謝られる。
「そういえばもう少しで夏休みじゃない?お友達とどこかお出かけしたりするの?」
同じクラスの生徒は、海やお祭りやらに行くと話していた気はするが私はどこにも行く予定はない。由花もきっとアルバイトを沢山入れているだろう。
「あっ、私文化祭実行委員になったのでそれの買い出しとかで友人と出かけるかもしれません」
友人というのは田島君のことだが、私が勝手にそう思っているだけで相手が友達思っているかどうかは別問題である。
「え!?瑠璃ちゃん文化祭実行委員になったの!?あ〜ごめんね。瑠璃ちゃんって人と関わるのあまり好きそうには見えなかったから」
間違えではないが、はっきりそう言われると少し傷つく。文化祭実行委員になったことにより、人と関わる事が多くなったのは事実だか、その状況も別に嫌いではない。少しずつ好きになり始めている。
「鈴木さん、今日はいかがでしたか?前回に比べてリラックスしてできましたか?」
私のことを気遣って下さり、わざわざ石田先生も赴いてくれた。
「そうですね、前回よりもリラックスしてできました」
私と春川さんと石田先生は、軽く世間話を始めた。私の文化祭実行委員の話題になった時は、石田先生までびっくりして、その反応を見た春川さんが大笑いする。私もなんで笑うんですかと言いつつも、自分自身も笑っていた。
「あっ、石田先生は真二さんという患者の担当なんですか?」
前に石田先生の名前を出した時に、嬉しそうに微笑んでいたのを思い出し聞いてみる。一瞬眉毛がぴくっと動いた気がしたが、その患者のことは知らないと言われた。真二は知ってそうな感じだったが、自分が一方的に相手のことを知っている時があるので、そういう感じなのかと納得する。
石田先生は、次にも仕事があるみたいで一足先に部屋から出て行く。春川さんとも最後に軽く挨拶をして、着て来た私服に着替えることにする。
この後は、また真二さんの所に行き色を教えてもらう。どんな色との出会いがあるか、わくわくが止まらない。
夢は夢と割り切った方が良いのかもしれないが、そういうわけには行かない。なぜなら今日は、治療が終わった後に真二と会う約束をしているからだ。
会った時には夢の話をしようと心に決め、病院へと向かった。
今回は2回目ということもあり、リラックスして行うことができそうだ。前回は赤系統の色を観たが今日は黄色系統を観ていく。黄色系統は赤系統と違って温かったり、瑞々しいらしいのでどんな色合いなのか楽しみだ。
「瑠璃ちゃん久しぶり!久しぶりって言っても1週間ぶりくらいかな?」
今日の担当も春川さんらしく、彼女の元気な声が聞こえる。
「そうですね。今日もよろしくお願いします」
任せてね!という代わりに親指を立てて見せた。
春川さんが部屋から出ていくと、前回と同様に色覚補正コンタクトレンズを鏡を見ながら入れる。準備が整うとスピーカーが流れ、石田先生の声が流れる。
「鈴木さんこんにちは。体調はお変わりないですか?」
大丈夫です。と答えると、それは良かったです。と声が聞こえる。そして今回の治療の説明に入る。
「今回鈴木さんには前回お話しした通り黄色系統の色を観て頂きます。黄色、橙色、緑です。では始めていきましょう」
石田先生が操作しいてる機械音が響く。この音はどうもなれなくて、不安が膨れ上がる。慣れる日が来れば良いと切に願う。
「どうですか?鈴木さん観えますか?」
ゆっくり目を開けると前回とはまた違った色合いが広がっている。毎年夏になるとよく見かける花だ。
「これは…ひまわりですか?」
「そうだよ。正解だ」
沢山のひまわりが一面に咲いていたらどんなに素敵だろうと想像する。桜や紅葉とは違う素敵な色合いだ。春といえば桜、秋といえば紅葉と答えるように、夏といえばひまわりだ。みんなが口を揃えて「青空の下のひまわりは最高だ」という気持ちが分かった。青空があればまた違って見えたことだろう。
ひまわりの真ん中は前回習った茶色だった。知っている色が出てくると嬉しい。ひまわりの花びらと茎と葉は、まだ観たことのない色だ。でも、ひまわりの色合いは言葉としては知っている。分かると思った。
「えーと、ひまわりの花びらは黄色で茎と葉は緑ですよね?」
「そうだね。でも、茎や葉を黄緑色と表現するときもありますよ。まぁ、どっちが正解とかはないと思いますが」
次に写し出されたのは夕焼けだった。きっとこれは赤色と橙色だ。でも、それは大まかに分けた時はの話だ。きっと真二に言わせれば、茜色と雀色だろう。
私が黙っているので石田先生が声をかける。
「これは夕日ですがどうですか?私はどうも夕日を見ると寂しい気持ちになってしまいます」
その気持ちは分からなくもなかった。夕日を観ているとどこか寂しい気持ちになる。
「これは、赤色と橙色ですよね。でももっと詳しくいえば、茜色と雀色ですか?」
石田先生からの返事はなかった。私の声が聞こえなかったのかと思い、もう一度声をかけてみる。
「すみません。機械の不具合でスピーカーがちょっと変でしたね。失礼しました。茜色と雀色でしたっけ?よく知ってますね。最近の若いは知らない人が多いんですよ」
機械の不具合が治ってよかった。茜色と雀色は真二から教えてもらった色だ。最近まで私も知らなかったので、石田先生のいう最近の若い人は知らないというのは、あながち間違いではないと思う。
次の画像に写りますよという声と共に次はピーマンやきゅうり、ブロッコリーだった。お野菜がたくさん写し出されている。
野菜は緑色が多いと前に聞いたことがあるが、本当に多いのだと改めて実感する。小さい頃はピーマンが苦手でよく残していた。ピーマンの苦味がどうも小さい頃の私には合わなくて、食べるのに一苦労したのを覚えている。
「これは、緑色ですね。小さい頃ピーマンが苦手で、母親に全部食べなさいって怒られたのを思い出しました」
はははははは!と笑い声が聞こえる。
「小さい子はピーマンが苦手なんですよ。この病院に入院している、小児科の子供達もいつも残してる」
そうなんですね。私もつられて笑ってしまった。大きくなるにつれて私は食べられる事ができたが、中には大人になっても食べられない人がいるみたいだ。
次は、かぼちゃの写真だ。かぼちゃといえば私の中ではハロウィンが想像される。小さい頃地域の集まりで、お化けの格好をしてトリックオアトリート!と言ってお菓子をもらった。
その後かぼちゃ料理やお菓子などを食べて過ごした楽しい思い出だ。そんなかぼちゃは、どうやらオレンジ色をしているらしい。
私の中では、オレンジ色は美味しそうな色合いに見える。ただ単にかぼちゃが好きだからかもしれないが。
「どうやら私は食いしん坊かもしれないです。かぼちゃを見た時凄くおいしそうと思ってしまいました」
自分で食いしん坊と言っているが、実際他の人に知られてしまうのは恥ずかしい。
「そんなことありませんよ。赤やオレンジは食欲を増進させる効果もあるんです。きっと鈴木さんは初めてその効果を実感できたのではないですか?」
色にはそんな効果もあるのだと初めて知った。赤系統の色は温かく、青系統の色は冷たいと聞いたことはある。食べ物にまで影響していることには驚いた。
色彩や水彩、彩りなど色に関する言葉の中には彩という文字が入る。それはきっと料理にも使えることで、彩りを意識した料理が作れたらもっと美味しくご飯が食べられると思った。想像するだけではなく、実現させたいという気持ちが膨らむ。
想像していると、ぱっと次の画像に画面が動いた。表示されたのは、トラだ。獲物を狙っているかのように、目が鋭い。
このトラが何色をしているか観察するが何色をしているか、答えが出なかった。所々黒い模様が入っているのは分かるが、大まかな毛が黄色なのか橙色なのかはたまた茶色なのか…。
「トラって何色なんですかね。私は黄色にも見えるし、橙色、茶色にも見えたりします。トラはとても不思議な色合いを持っている動物なんですね」
「とても良いところに注目しましたね。日本人は主に黄色と答える人が多いんですよ。他の国ではトラと言ったらオレンジと答えます。まぁ、中には茶色と答える人もいますがね」
私が観えていた色は間違いではなかったのだと思い嬉しくなる。他国の人とでも観え方が変わることも私は知らなかった。知らないことが多すぎると実感する。
「では、今日は最後にこちらの画像を観て終わりにしましょう」
前回は桜の木のが最後だったが、今日は何かと期待してしまう。画面が切り替わり写し出された画像に動きが止まった。
それは、体育館の裏やこの病院の裏庭に立っているオークの木とよく似ていたからだ。
「これは、オークの木ですか?」
「ん?よく知っていますね。これはオームの木ですよ。この病院の裏庭にも立っていますが立派なものでしょう」
本当、立派に見える。学校にあるオークの木の下で由花が向田さん達に声をかけたり、病院の裏庭では真二に出会ったり…。最近の出来事は全部オームの繋がりで出来上がっている気がする。
オークの木を観たら真二に早く会いたいと胸がはやる。治療のために病院に通っているが、真二に会うのも最近の楽しみの一つだ。
「今日の治療はこれでお終いです。お疲れ様でした」
前回と同様に終わりのアナウンスが聞こえる。私はコンタクトレンズをケースにしまい、春川さんが来てくれるのを待つ。
「お疲れ様ー!今回は黄色系統の色を観たんだよね?どうだった?」
機械の装置を丁寧に剥がしながら私に声をかけてくださる。
「そうですね。今回は色の大切さを感じられた気がします。その状況ごとに色の使い分けとかできたらもっと素敵になると思いました」
嬉しそうに、うんうんと頷くと次で最後だけどどう?と訊かれる。
最後に青系統の色を観たらこの治療も終了する。最終段階は手術するかどうかだが、まだそこまでは決められない。私が俯くと春川さんは手をブンブン振って余計なこと訊いちゃってごめんねと謝られる。
「そういえばもう少しで夏休みじゃない?お友達とどこかお出かけしたりするの?」
同じクラスの生徒は、海やお祭りやらに行くと話していた気はするが私はどこにも行く予定はない。由花もきっとアルバイトを沢山入れているだろう。
「あっ、私文化祭実行委員になったのでそれの買い出しとかで友人と出かけるかもしれません」
友人というのは田島君のことだが、私が勝手にそう思っているだけで相手が友達思っているかどうかは別問題である。
「え!?瑠璃ちゃん文化祭実行委員になったの!?あ〜ごめんね。瑠璃ちゃんって人と関わるのあまり好きそうには見えなかったから」
間違えではないが、はっきりそう言われると少し傷つく。文化祭実行委員になったことにより、人と関わる事が多くなったのは事実だか、その状況も別に嫌いではない。少しずつ好きになり始めている。
「鈴木さん、今日はいかがでしたか?前回に比べてリラックスしてできましたか?」
私のことを気遣って下さり、わざわざ石田先生も赴いてくれた。
「そうですね、前回よりもリラックスしてできました」
私と春川さんと石田先生は、軽く世間話を始めた。私の文化祭実行委員の話題になった時は、石田先生までびっくりして、その反応を見た春川さんが大笑いする。私もなんで笑うんですかと言いつつも、自分自身も笑っていた。
「あっ、石田先生は真二さんという患者の担当なんですか?」
前に石田先生の名前を出した時に、嬉しそうに微笑んでいたのを思い出し聞いてみる。一瞬眉毛がぴくっと動いた気がしたが、その患者のことは知らないと言われた。真二は知ってそうな感じだったが、自分が一方的に相手のことを知っている時があるので、そういう感じなのかと納得する。
石田先生は、次にも仕事があるみたいで一足先に部屋から出て行く。春川さんとも最後に軽く挨拶をして、着て来た私服に着替えることにする。
この後は、また真二さんの所に行き色を教えてもらう。どんな色との出会いがあるか、わくわくが止まらない。

