アサクラさんの駄文

いいお湯だった
あの後アサクラさんは寝てしまい、とりあえず温泉に行った
夕飯は軽いものなら作ってくれるそうだったが、そんな気分ではなかった

「戻りましたー」
まだ寝ているかもしれないので、起きていれば聞こえる程度の声で帰りを伝える

「随分長かったね」

「起きてたんですか」

アサクラさんは旅館ならついてる謎のあのスペースの椅子で月見で一杯やっていた

「温泉行ったんですね」

「君が出ていく音で起きちゃってね」

「すみません」

「責めたわけじゃないよ」

突っ立ったままでやり取りをしていると手で向かいの椅子を指す

「まあ座りなよ」

「つまみはないんですか」

「あったら一瓶じゃ済まなくなりそうだからね」
「飲むだろ?」

「…そうですね」

徳利から猪口に注がれる

「忘れてないだろうね、誓ったこと」

「もちろんです」

「そっか…あのさ、いや、やっぱ忘れて」

「なんですか」
聞かないと、酒には口をつけられなかった

「いや…その…きっと気の迷いだからさ、気にしないで」

「そこまで引っ張られると無理ですよ」

「…わかった、私も酔ってるからさ、ね?真に受けないでね」

じれったい

「その…篠山くんさ、付き合わない?」

「またドライブですか?流石に寝ましょうよ」
酔った勢いでそんな事言われちゃ困る

「あーーいや、そっちじゃなくて」

そっち?

付き合う

付き合うって

「恋人に…ってことなんだけど」

「…まじですか」

「まじ、いやわかってるよ年上ってか年増はないよねうん、でもほらお互いめんどくさくなさそうだし、篠山くんかわいいとこあるし、恋人なっちゃえばどういう関係か説明するのも楽だし、このままなぁなぁでよくわからない関係のママよりか、きっぱりここで告白したほうがわかりやすいかなって、最近親もうるさいしどうかな〜っていやうんごめんね困らせるだけだよね忘れて!うん忘れて!」

関係性
たしかに僕達は”将来(夢を追うこと)を誓いあった仲”だが
”そういう”ことではないし
友達というのでもないし
いわれれば僕達の関係を正しく示す言葉はないだろう

じゃあもういっそ”そういうこと”にしてしまえば
社会的にもお互いをパートナーとして楽じゃないか


お互いが諦めてないか見れるし、それのために婚活だの親の何だの社会的なあれも楽
同棲しなくても最悪いいし、しても僕らなら問題は無さそう
それらを抜きにしてもこの一日でアサクラさんの事はわかった
声も顔も正直タイプだ。カッコイイ系。
「えっと…あーなんていうか…」

「やっぱ困るよね、ごめん忘れて!」

「いや、その…断る理由ないなって…」

「…じゃあ、その…」

「こうなりゃとことんお互いの夢のためです。アサ…リツキさん、付き合ってください」

「もちろん!」

なみなみと注がれた2つの猪口に三日月が写っていた