アサクラさんの駄文

「ジントニック、もう一杯」
「今日はいつになく飲むね、篠山くん」

僕は大学近くのバルで泣き言を吐いていた
就職活動がうまくいっていなかった

「内定が全然出ないのはわかったよ、あれは?こないだ言ってた新人賞は?」
「あー…あれですか、連載はいかなかったけど名前は覚えとくって、次を待ってるって言われましたよ」
「ほぉ、じゃあその次は描いたのかい?」
「どーせ世辞ですよ。第一、就活でそんな体力ねーです。ジンまだですあ」
「これはだいぶ酔ってるね」
「今日くらいのませれください」
しかたない、というような顔で僕の前に置く

だが僕はそれに手をつけず、また泣き言をつぶやき始めた
どうせ後で後悔するとわかっていながら

「アサクラさん、いらっしゃいませ。もうそんな時間ですか」
「おや、私より若いのがこの店にいるのは珍しいね、河大の子?」
「あそうだアサクラさん、この子送ってあげてくださいよ、車あるでしょ?」

ドアのベルにすら気づかなかった
何を話していたか、ふとそこにはいかつい柄のTシャツにパーカーを羽織った女性がいた
服装はいかにも輩な雰囲気でありながら入墨どころか指輪もイヤリングもなにもつけていない不思議な人だった

「えー…こないだだって潰れた斎藤さん送ってたじゃん」
「またうちのなにか奢りますから」
「なんですかひとをじゃまものみたいに。本人の前で言いますかぁ」

また、三秒前の自分を後悔する。心配してくれているのに適当な言葉が口から出る
…今度はなにを言っただろうか

「若い悩みだね」
なにか呟かれた気がしたがわからない
短いし大したことではないだろう

「これもらうよ」
「僕、のです」

何なんだこの人は、僕の眼の前にあったグラスは十秒もたたず空になった

「篠山くんだっけ、ドライブ付き合ってよ」