異世界美容院『ANGELI』

他にも考えなければいけない事項は山ほどある。
まずは教材だ。
これは日本の物をパックってしまえば何とかなるだろうと思う。
訳すのが大変だろうけど、シルビアちゃんの手を借りればどうにかなりそうだ。
シルビアちゃんは凄いな、だってなにかと接している機会がある所為か、それなりに日本語を理解しているからね。
逆に俺は異世界の文字はからっきし駄目だ。
そもそも覚える気がないとも言う。
ていうか、なんで話が通じるんだろう?
俺は日本語で話してるのに・・・よく分からん。
たぶん、女神様が何かしら弄ってんだろうね?
同時通訳的な?
どうでもいいか・・・

次に規模感だな。
最終的にはこの世界の各国に設立したいけど、何年後になるのだろうか?
最初はメイデン領にしか設立しないけどね。
一気に手広くなんて出来ませんての。
俺も超人じゃありませんからね。
一人で出来る事には限りがあるっての。
困ったもんだ・・・それにしてもどうしてこうなった?

一クラスから始めるとなると、最大で四十名の生徒しか受け入れられないな。
それと同時に教師と成りうる者達を授業に参加させる。
さて、何人が教師候補になるのだろうか?
ここは美容師組合の会長の権限を最大限使わせてもらうとしようか。
フフフ・・・
ここにきて、競合を造ろう作戦が功を奏し始めているな・・・

問題はどれぐらいの授業内容にするのか?
美容師に特化するのか?
はたまた、一般常識やら通常の学問も教えるのか?
こういった点は俺の手からは離れる事になるが、適任となる教師がいるのだろうか?
ここは応相談だな。
伯爵辺りにでも相談すれば、どうにかなるだろう・・・
実に悩む処だ。

あとは給食を取り入れるべきか?
何時から始まり、何時に終えるのか?
授業の時間は?
決める事は多岐にわたる。

学費はいくらぐらいが妥当か?
安過ぎず、高すぎず・・・
確か、この国の平均年収は金貨二百枚ぐらいだとか・・・
日本の約半分だな。
そしていつから始めるのか?
準備期間はどれぐらいなのか?

後は・・・ああー!もう!
考える事が多すぎる!
そもそもだ!
俺一人でやる必要は無いんだよな・・・
でも誰を巻きこめばいい?
伯爵が妥当な処だが・・・ライゼルなんかは話にならない・・・
んん!いた!
そうだ・・・適任者がいるではないか・・・
フフフ・・・



翌日の夜。
俺は主だった者達を温泉旅館の宴会場に呼び出した。
各自様々な反応を示している。
不安そうな者、興味深々な者、不審に歩き回っている者、緊張を隠そうともしない者等。
何故に呼び出されたのかを全員が訊ねあっていた。
準備してある食事には殆ど手が付けられていない。
大体の者達はお水を飲むか、お茶を嗜んでいた。
用意してある椅子には腰掛けようともせず、立ち上がったままだ。
何とも言えない雰囲気が場を支配していた。

一足遅れて入場する俺達。
俺に加えて、美容院『ANGELI』のスタッフも全員勢ぞろいだ。
まだスタッフには何も伝えて無いため、この場での発表になる。
にも関わらず、スタッフ達は余裕の表情を浮かべている。
家のスタッフにとっては、俺が何かしら行う事に全幅の信頼を置いている。
自分で言うのもなんだが・・・
それにもう慣れてしまっているんだと思う・・・たぶん・・・
そう言った事もあってか、急な呼び出しなど些事に等しい。
随分と逞しくなったものだな。
有難いことです。

全員を見渡してから挨拶をする。

「皆さん、お疲れ様です」

「「「お疲れ様です」」」

「お疲れー」

「お疲れっす!」
反応は上々。

「では、先ずは飯にしましょう」
数名はズッコケていた。

「ジョニー店長・・・しかしだね・・・」

「何の為の緊張感だったのか・・・」

「いーや、すまないねえ。家のスタッフ達はまだ晩飯を食ってないからね」

「そ、そうだな・・・」
そんな事はお構いなしに晩飯を取りに行くスタッフの面々と、我が家族。
食事を我慢していたのか、まったく手が付けられていない様子。

「ほら、皆さん。飯!飯!」

「そっ、そうですね」

「待っている意味は無かったみたいだな・・・」

「腹減ってただよな・・・」
つられて食事を始める一同。
各自好きに選んでいる。
ビュッフェ形式にして正解だったな。
高貴な人達も混じっているがお構いなしだ。
同じ釜の飯を食いましょうってね・・・ちょっと違うか?
アルコールも準備されているが、誰一人手を付けようとはしていない。
俺と親父を除いては・・・
だって遠慮する必要なんてありませんよね?
違うかな?

結局のところ、食事は大いに盛り上がっていた。