異世界美容院『ANGELI』

サミット開催を前にしてとんでもない事態となっていた。
余りの出来事に打ち震える者達、それはジョニーも同様だった。
いったい何が起きたのであろうか?



ララが天界に帰ってから凡そ一週間が過ぎようとしていた。
ああ・・・無茶苦茶寂しい・・・
早く帰ってきてくれよ・・・俺の肩はいつでもララの為に空いてるぞ・・・

今は営業時間より前の朝食を摂り終えた時間だ。
いつもの如くライゼルと一緒に朝食を食べ、コーヒーで一息ついていた。
そんな隙間を見計らうかの如く、ララから念話が入り。
一人で着付室に来てくれとの事だった。
珍しい呼び出しだ。
ちょっと校舎裏まで面出せやってか?

珍しい呼び出しだな等と考えつつも、言われるが儘に着付室の扉を開き、中に入った。
!!!!!!!
呆気に取られてしまった。
否、時間が制止しているのではないかと錯覚するほど度肝を抜かれていた。

其処には美少年?美青年?が佇んでいた。
銀髪を靡かせて穏やかな微笑を携えている。
優雅でまるでお伽話にでも出てきそうな清潔感。
神々しい雰囲気に背筋が伸びそうになる。
実際に後光が射している様に感じる。
齢の頃は十六歳ぐらいであろうか?
余りにも現実離れした佇まいが眼を刺激する。
この世ならざる存在がそこにはいた。

そしてなぜか彼は・・・マッパだった・・・それなりのブツをぶら下げている・・・

「ジョ兄!」
両手を広げて俺に抱きついてくる美青年。
ビックリして固まる俺。
ん?・・・この声は・・・
抱きついてきた美青年を引き剥がし、その眼をしっかりと見定める。
これは間違いない・・・

「お前・・・ララか?・・・」

「うん!そうだよ!驚いた?」
そりゃあ驚くに決まってるだろう・・・

「ああ・・・どうしてそんな姿になってるんだ?・・・」

「エヘヘ・・・人化出来る様になったんだよ・・・凄いでしょー」

「そ・・・そうだな・・・」
人化って・・・見た目は人だが、遥かに人を超える存在じゃないか・・・オーラが凄いぞ・・・ララさんや・・・
再び抱きついてくるララ。
ふう・・・もうどうにでもなれ!ってな訳にはいかないでしょうよ。

「ララ・・・マッパは駄目だろう・・・」

「えっ!そうなの?」

「そりゃあそうだろう・・・人の姿をするんなら服を着なさい!」
これは教育が必要だな。

「はーい」

「ちょっと服を取ってくるから待ってな、絶対にこの部屋から出たらだめだからな!」

「うん!待ってる!」
俺は全速力で二階に駆け上がった。
適当に目に付いた下着とシャツとズボン、そして靴を準備した。
サイズが合っているのかは不明。
今はそんな事にはかまっていられない。
ララをマッパの儘になんて、できませんっての。
再び全速力で今度は一階に降る。
お店に入ると不思議そうに俺を眺めるライゼル。

「ライゼル!着付室に絶対に入ってくるなよ!」

「はあ?・・・何で?・・・」

「いいから!」
血相を変えて着付室に飛び込む俺。
ライゼルは首を傾げていた。

下着やら衣服やらをララに押し付ける。

「ララ、これを着るんだ」

「うん」
服を着たことが無いララは動きがギクシャクしている。
そんなララを見て少し落ち着きを取り戻した俺。
だって、無茶苦茶可愛かったんだもん。

「ララ、貸してみろ」

「うん」
ララにパンツを履かせて、Tシャツを着させる。
靴下を履かせてズボンを履かせる。
うーん、ちょっとブカイかな?
まあいいや、ベルトを締めると、多少は益しになったみたいだ。
最後にネルシャツを着させる。

「ララ、自分でボタンを締めれるか?」

「やってみる・・・」
服の感覚に不慣れな所為か、もぞもぞとしているララ。
その姿が余りに滑稽で笑ってしまった。

「プププッ!」

「もうー、ジョ兄!笑わないでよ!」
にしても可愛らしい声だな。

「いや、だってさ・・・ララお前・・・なにもぞもぞしてるんだよ・・・ん?」
あれ?・・・

「ララ・・・声・・・」
そう、あの頭に響き渡る念話では無く、声帯から声を発している。

「うん!喋れるようになったんだよ!」

「おお!そうか!」
おおー!肉声も可愛いぞ!

「凄いでしょー」

「ああ!凄いぞララ!」

「この為に僕頑張ったんだからね!褒めてよね!」

「立派だ!それに良い声してるじゃないか!」

「エヘヘ・・・」
照れている表情も可愛いな・・・不味い・・・これではBLになってしまう・・・

「にしても、何で人の姿になったんだ?」
本当にそれな・・・

「この方が皆と話易いかと思って・・・」

「なるほど」

「それにこの方が何かと役に立つかと思ってさ」

「というと?」

「例えば、ジョ兄達ともっと触れ合えるとか。後はお店のお手伝いとかが出来るとか?」
そんな健気な・・・お気持ちはありがたく頂戴しておくけども、伝説の聖獣さんにお店の手伝いをさせるなんて駄目だろう・・・あれ?・・・もしかして・・・

「お前美容師に成るってのか?・・・」

「そうじゃないけど、僕『ANGELI』が大好きなんだ!」

「ララ・・・嬉しい事を言ってくれるな・・・」
まずい・・・俺、泣きそう・・・

「へへへ・・・後・・・僕・・・人の姿になってみたかったんだ・・・」

「そうなんだ・・・」

「うん・・・憧れだったの・・・」

「ほう・・・」
そうだったんだ・・・知らなかったよ・・・
でも、そうだった。
本当はララは人になって俺達と再会したかったんだったな。

「女神様に相談したんだ・・・そうしたら人化する魔法を教えてくれてさ・・・」

「そうか・・・でもどうして・・・あっ・・・」
ララは俺達と一緒が良かったんだ・・・
同じ目線で、同じ感覚で・・・

「本当は聖獣なんかじゃなくて、人に成りたかったんだ」
ああ・・・そうだったな・・・

「・・・」

「それと・・・ジョ兄に髪を切って欲しかったんだ・・・」

「本当か?」
ララは俺に腕を差し出す。
俺は思わず握り返す。

「ね?・・・こうやって触れ合えるし便利だよ、人の身体は・・・」

「そうだな・・・」
今度は俺に抱きつくララ。
全力でハグをする俺達。
何だか・・・夢みたいだな・・・こうやって抱き合えるなんて・・・

ドアをノックする者がいた。

「おい!ジョニー!どうなってんだ?」
ライゼルであった。
あー!もう!良いところだったのに!