異世界美容院『ANGELI』

第二回サミットを前にして、国王始め王家の一団が温泉街ララに出向いていた。
なかなかの大所帯である
今回は全員勢ぞろい。
ライゼルは弟と再会を果たし、とても喜んでいた。
弟は今回も城に残ると言い出したみたいだが、ララに挨拶させない訳にはいかないと無理やり引っ張って来たみたいだ。
ひきこもりかっての・・・
身なりとしては我儘ボディーのそれっぽい感じだったけどね。
それなりに納得だな。
もうちょい身体を引き締めなさいっての・・・

リックの親父さんも同行しており、俺は挨拶をされた。
こちらは眼を見張る程の紳士だ。
口髭がダンディーさを助長しているな。
うん!ナイスミドルです!

「愚息が大変お世話になっております」
深々と頭を下げるリックの親父さん。
隣で照れているリック。
おやおや?こんなリックを見れるなんてな・・・フフフ。
普段はこんな表情を見せないが、親父さんの前ではこんなもんなんだろうな。
俺にはこの気持ちは無いに等しいのだが・・・
これは育ちだな・・・

「いやいやいや!愚息だなんて、リックにはこちらもお世話になってますよ!ハハハ!」
此処はリックを褒めておこう。

「左様でございますか、是非こき使って下さいませ」
良い返しをくれるリックの親父さん。

「それはもう、そうさせていただきますよ!ガハハハ!」
ジト目で俺を見るリック。
それにしても、リックの親父さんは堂に入っているな。
流石はかつてライゼルの教育係をやっていた人物だ。
ライゼルも嬉しそうにしているしな。

それにしても今回は大所帯だ。
本来なら伯爵邸に泊まる所を、敢えて温泉宿に宿泊するらしい。
随分と気に入られたみたいだ。
まあこちらとしては助かるけどね。
好景気によって宿泊費は値上げして正解だったみたいだった。
それでも客足は全く途絶えていない。
権利収入だけでそれなりに儲けさせて貰ってますよ。
有難い事に・・・
もうとっくに住宅ローンは完済しました、ありがたい話です。

当然従業員の給料は上がってますよ。
スタッフには感謝しないとね、そして給料として還元する。
経営者としては当たり前でしょうよ。
実際に家だけに関わらず、何かと物価が上がっているからね。
インフレにならなければいいけど・・・
この好景気はいったいいつまで続くのか?
当分の間は収まりそうにない気がするな。
まあ此処は様子見だね。
俺にどうにか出来る事でもないけどさ。

そんな事もあって、美容院『ANGELI』の料金システムも一部見直した。
値上げしないと物価とのバランスが取れなくなるからね。
こんな風に料金を見直すことに成るとは思わなかったよ。
大体は原材料費が高騰して、仕入れ値が上がったから値段を上げたとか。
競合が値上げをしたから家もなんてのが相場なんだけどさ。
ほんと、どうにかしてるよ。
それにしてもどうしてこうなった?
間違いなくララの影響なのは分かっているけど・・・ここは皆まで言うまいよ。

いづれにしても温泉街ララは活気に溢れている。
数年前とは比べ物にならないよ。
良い事だからいいんだけど、時々怖くなるよ。
人口も飛躍的に増えて、伯爵が言うには領収は5倍以上になったのだとか・・・
凄い事ですね。
それでも人が足りないなんて話をよく聞くんだよな。
景気が良くなるなんてこんなもんなんでしょうね。
どこも人不足だってさ・・・日本と変わらないな。

国王に続いて、一足お先に温泉街ララに来たのはジョルジュだ。
こちらは何かと前打ち合わせを行う為だ。
彼は毎日忙しそうにしているよ。
隙を見つけてはララに挨拶に訪れて居る。
ジョルジュは顔パスだ。
ある意味ララの右腕なんだからそうせざる得ないだろう。
それにしても真面目な奴だな。
毎回俺にも挨拶を欠かさない。

そして今回のサミットには前回参加できなかった三国が加わっている。
この三国は温泉街ララから遠く離れており、陸路では半年かかる距離にある為、前回は参加出来無かったのである。
今回はジョルジュ達エルザの村の協力で、空路での移動が可能となり、参加できる運びとなった。
その移動手段は魔道飛行船だ。
魔道飛行船であれば、わずか二日で移動が可能になる。
ここにきて早くもエルザの村を開放した恩恵がこの世界には訪れていた。
そこに来て今は車擬きも拡がりを見せており、この世界の流通は飛躍的に進歩した。
飛行士や、ドライバーという職業まで生まれ、この世界の変貌は凄まじい勢いで加速している。
やはりエルザの村が解放された意味は大きい。
ララの顕現がなければ敵わなかった事態である。



初参加の三国の首脳陣は挨拶も兼ねて、こちらも一足先に温泉街ララに到着している。
各々がララに謁見を求め、それが叶ったのである。
他の国々の主導者達に漏れず、ララに膝を付く首脳陣。
それが当たり前の光景となりつつある。
中には感極まって泣き出す者や、身体の震えを止められない者もいた。
優しくララに声を掛けられて嬉しそうにする一同。
其処には幸せな時間が流れていた。
他にも各国の首脳陣が訪れてはララに挨拶にやってきていた。
そしてララのみならず、ジョニーにも挨拶を行っていた。
当の本人は顔と名前が一致しないのであろう。
少し挙動不審になる場面もあったが、それよりも他でやってくれと言いたげであった。
だが、ここは大人の対応をしているみたいである。



そして後一週間でサミットが開始するというタイミングで、ララは準備があるとジョニーに告げ、天界に帰っていった。
この帰還がララに大きな変貌を遂げる事になるとは誰も想像をしては居なかったのである。