新たな美容師の誕生にメイデン領は沸いた。
これまでの『ANGELI』のスタッフとは違い、髪結いさんが美容師免許を取得したのだ。
これで競合が出来ると俺も胸を撫で降ろしたのも束の間。
競合出店に際して問題が発生していた。
俺達はアイレクスさん達を祝おうと、バー『ANGELI』に三人を呼び出した。
三人は喜び勇んで店の中に入ってきていた。
「美容師免許の取得おめでとうございます!乾杯!!!」
「「「乾杯!!!」」」
ビールをグビグビと飲み干す一同。
歓喜の酒とは正にこの事を言うのだろう。
実に旨そうに生ビールを飲んでいる。
ハハハ!俺も嬉しいよ。
「それで、美容師になったご感想は?」
「はい!本当にジョニー店長には感謝しております」
「いやいや、そういうのはいいからさ」
「そうはいきません!ジョニー店長のお導きがあってこその美容師免許取得なんですから!」
「そうですか・・・」
困ったな、別にそんなつもりでは無く、俺は競合を作りたかっただけなんだけどな。
まあ、そう言って貰えるならそうしときましょうかね?
「さあ、食べましょうか?今日は俺の奢りですよ」
「ありがとう御座います!では遠慮なく」
「リックさん!注文いいですか?」
「はいよ、ジョニーの奢りだ。遠慮は要らねえよ」
「そのつもりです!まずはから揚げと、ポテト、ポテチの塩味、それからツナサラダ、マルゲリータピザに、ナポリタン、後は塩ラーメンを各三人前で」
おいおいおい!よく食べますなー。
別にいいけど・・・
「リック、俺は枝豆をくれ」
「おうよ!じゃんじゃん出すからたくさん食ってくれよ!」
何を煽ってんだこいつは・・・
その後一心腐乱にバクバクと食べだした三人、余りの迫力に他のお客さんも引いていた。
「ハハハ・・・よっぽどお腹減ってたんですね・・・」
こうコメントするしかなかった。
一段落つくと、こんな会話となっていた。
「ジョニー店長!私達を雇って貰えませんか?」
「そうです!よろしくお願いします!」
「無事に美容師に成れたことですし!」
何言ってんだ?この人達・・・
俺は競合を作ろう作戦を展開していたのであって、スタッフを増やそう作戦を繰り広げてきた訳ではないってえの。
「はあ?駄目ですよ!自分のお店を持っているでしょうが?三人とも」
「ですが・・・」
「それはそうですが・・・」
「はい・・・」
ん?どういうことだ?
「ちょっと説明して貰えませんかね?」
俯いてしまった三人。
その後とつとつと状況を語り出した三人。
俺はその内容に頭を抱えそうになっていた。
先ずは簡単な話、資金が無いということだった。
今では髪結い屋さんではシャンプーを受けることが出来る。
その為、カットとセットしか出来なかったこれまでとは違い、お客さんの満足度は上がっている。
しかしその一方ではこんな現象が起きていた。
髪結いさん達の間での、お客さん争奪戦が始まってしまったのだった。
その発端はシャンプーやカット料金の格安店が出来上がってしまったことに端を発している。
元々は髪結い組合に属する店舗は一律の金額設定をしなければならなかった。
これを俺の助言によって撤廃してしまったのだ。
そもそも髪結いさん達の受け持っているパイは少ない。
それを奪い合う事で、低料金のサービスを展開することになってしまい、ただでさえ少なかった客数に加えて、客単価が低くなってしまったのだった。
安易な発想が引き起こす経済状況といえるだろう。
これが客数が多く、それを奪い合う事であれば成立する出来事だ。
でも現状は違う、これはただ単に独占しようとした一部の者達が起こした、自ら首を絞める現象である。
それに他の髪結いさん達が巻き込まれてしまったのだ。
加えて経済状況に大きなダメージを与えたのは、貴族達の様な金銭を持っている者達の髪結いさん離れであった。
事の発端はフェリアッテの失脚だ。
あの一件以来、貴族達は髪結いさんを雇うのを止め始めてしまったのだった。
更には『ANGELI』に通う事にステータスを感じる様になってしまっただけでは無く、目覚めた美意識は自ら髪を整える楽しさを目覚めさせてしまったのだ。
貴族達の髪結いさん離れの原因は詰まる所、その原因は俺であった。
これは何ともしがたい・・・全く罪悪感が無いとは言わないが、俺は自分の職務に忠実に従ってきただけである。
そこから生まれた弊害である。
実際髪結いさん達は俺を責める風潮はない。
それ処か競合を作ろうと、俺は商品開発に加えて技術の習得にも時間を割いているのだ。
感謝されているのが実態である。
ここで恨まれた日には、俺は人を嫌いになるだろう。
加えて遂に髪結い組合の隠し金が底を付きそうだという話だ。
フェリアッテの遺産もこれまでである。
これまで髪結いさんに助成金を払ってきていたが、いよいよそれも終わりを告げる。
詳しく聞いて行くと、髪結いさん達の気苦労は絶えなかった。
ただ、幸いなのは食べていくことは出来るという事だった。
喰い詰める現状で無くて良かったよ。
だが美容院をオープンさせるほどの資金は有していない。
美容院をオープンさせるには軍資金は必須である。
鏡やシャンプー台、そして一番お金が掛かるのは椅子だった。
これまでのこの世界の椅子では話にならない。
足で踏んで上下させるあの椅子だ。
機材自体は鋳掛屋のヤンレングスさんが造る事が出来たが、その金額は高額だ。
金貨百枚は降らない。
日本では、上手くやればこの十分の一ぐらいに抑えられる。
ざっくりではあるのだが、一人で勤めるお店でも金貨五百枚は必要なのだ。
どうしたものか・・・
ぶっちゃけ方法はいくらでもあるにはあるのだが・・・
そして次には、やはり技術にまだまだ不安があるという事だった。
言いたいことはよく分かる。
開業するのは美容院である、髪結い屋では無い。
当然お客からは美容院としてその技術が求められる。
そもそも日本でも、美容師免許を取り立てで開業する人は極めて稀だ。
もっと言うならば、実際にカットに入るには数年単位での努力が必要なのだ。
髪結いさんもカットはこれまでにもしてきている。
カットの基本はまあ良いとしても、美容師のカットでは無いのだ。
この差は大きい。
此処がマリアンヌさんやクリスタルちゃんとの大きな違いだ。
彼女達は俺のカットを散々見てきているし、俺から何度も何度も技術指導を受けている。
美容師としてのスタート地点が違うのだ。
それにしても一番良い方法はなんであろうか?
ここは思案処である。
これまでの『ANGELI』のスタッフとは違い、髪結いさんが美容師免許を取得したのだ。
これで競合が出来ると俺も胸を撫で降ろしたのも束の間。
競合出店に際して問題が発生していた。
俺達はアイレクスさん達を祝おうと、バー『ANGELI』に三人を呼び出した。
三人は喜び勇んで店の中に入ってきていた。
「美容師免許の取得おめでとうございます!乾杯!!!」
「「「乾杯!!!」」」
ビールをグビグビと飲み干す一同。
歓喜の酒とは正にこの事を言うのだろう。
実に旨そうに生ビールを飲んでいる。
ハハハ!俺も嬉しいよ。
「それで、美容師になったご感想は?」
「はい!本当にジョニー店長には感謝しております」
「いやいや、そういうのはいいからさ」
「そうはいきません!ジョニー店長のお導きがあってこその美容師免許取得なんですから!」
「そうですか・・・」
困ったな、別にそんなつもりでは無く、俺は競合を作りたかっただけなんだけどな。
まあ、そう言って貰えるならそうしときましょうかね?
「さあ、食べましょうか?今日は俺の奢りですよ」
「ありがとう御座います!では遠慮なく」
「リックさん!注文いいですか?」
「はいよ、ジョニーの奢りだ。遠慮は要らねえよ」
「そのつもりです!まずはから揚げと、ポテト、ポテチの塩味、それからツナサラダ、マルゲリータピザに、ナポリタン、後は塩ラーメンを各三人前で」
おいおいおい!よく食べますなー。
別にいいけど・・・
「リック、俺は枝豆をくれ」
「おうよ!じゃんじゃん出すからたくさん食ってくれよ!」
何を煽ってんだこいつは・・・
その後一心腐乱にバクバクと食べだした三人、余りの迫力に他のお客さんも引いていた。
「ハハハ・・・よっぽどお腹減ってたんですね・・・」
こうコメントするしかなかった。
一段落つくと、こんな会話となっていた。
「ジョニー店長!私達を雇って貰えませんか?」
「そうです!よろしくお願いします!」
「無事に美容師に成れたことですし!」
何言ってんだ?この人達・・・
俺は競合を作ろう作戦を展開していたのであって、スタッフを増やそう作戦を繰り広げてきた訳ではないってえの。
「はあ?駄目ですよ!自分のお店を持っているでしょうが?三人とも」
「ですが・・・」
「それはそうですが・・・」
「はい・・・」
ん?どういうことだ?
「ちょっと説明して貰えませんかね?」
俯いてしまった三人。
その後とつとつと状況を語り出した三人。
俺はその内容に頭を抱えそうになっていた。
先ずは簡単な話、資金が無いということだった。
今では髪結い屋さんではシャンプーを受けることが出来る。
その為、カットとセットしか出来なかったこれまでとは違い、お客さんの満足度は上がっている。
しかしその一方ではこんな現象が起きていた。
髪結いさん達の間での、お客さん争奪戦が始まってしまったのだった。
その発端はシャンプーやカット料金の格安店が出来上がってしまったことに端を発している。
元々は髪結い組合に属する店舗は一律の金額設定をしなければならなかった。
これを俺の助言によって撤廃してしまったのだ。
そもそも髪結いさん達の受け持っているパイは少ない。
それを奪い合う事で、低料金のサービスを展開することになってしまい、ただでさえ少なかった客数に加えて、客単価が低くなってしまったのだった。
安易な発想が引き起こす経済状況といえるだろう。
これが客数が多く、それを奪い合う事であれば成立する出来事だ。
でも現状は違う、これはただ単に独占しようとした一部の者達が起こした、自ら首を絞める現象である。
それに他の髪結いさん達が巻き込まれてしまったのだ。
加えて経済状況に大きなダメージを与えたのは、貴族達の様な金銭を持っている者達の髪結いさん離れであった。
事の発端はフェリアッテの失脚だ。
あの一件以来、貴族達は髪結いさんを雇うのを止め始めてしまったのだった。
更には『ANGELI』に通う事にステータスを感じる様になってしまっただけでは無く、目覚めた美意識は自ら髪を整える楽しさを目覚めさせてしまったのだ。
貴族達の髪結いさん離れの原因は詰まる所、その原因は俺であった。
これは何ともしがたい・・・全く罪悪感が無いとは言わないが、俺は自分の職務に忠実に従ってきただけである。
そこから生まれた弊害である。
実際髪結いさん達は俺を責める風潮はない。
それ処か競合を作ろうと、俺は商品開発に加えて技術の習得にも時間を割いているのだ。
感謝されているのが実態である。
ここで恨まれた日には、俺は人を嫌いになるだろう。
加えて遂に髪結い組合の隠し金が底を付きそうだという話だ。
フェリアッテの遺産もこれまでである。
これまで髪結いさんに助成金を払ってきていたが、いよいよそれも終わりを告げる。
詳しく聞いて行くと、髪結いさん達の気苦労は絶えなかった。
ただ、幸いなのは食べていくことは出来るという事だった。
喰い詰める現状で無くて良かったよ。
だが美容院をオープンさせるほどの資金は有していない。
美容院をオープンさせるには軍資金は必須である。
鏡やシャンプー台、そして一番お金が掛かるのは椅子だった。
これまでのこの世界の椅子では話にならない。
足で踏んで上下させるあの椅子だ。
機材自体は鋳掛屋のヤンレングスさんが造る事が出来たが、その金額は高額だ。
金貨百枚は降らない。
日本では、上手くやればこの十分の一ぐらいに抑えられる。
ざっくりではあるのだが、一人で勤めるお店でも金貨五百枚は必要なのだ。
どうしたものか・・・
ぶっちゃけ方法はいくらでもあるにはあるのだが・・・
そして次には、やはり技術にまだまだ不安があるという事だった。
言いたいことはよく分かる。
開業するのは美容院である、髪結い屋では無い。
当然お客からは美容院としてその技術が求められる。
そもそも日本でも、美容師免許を取り立てで開業する人は極めて稀だ。
もっと言うならば、実際にカットに入るには数年単位での努力が必要なのだ。
髪結いさんもカットはこれまでにもしてきている。
カットの基本はまあ良いとしても、美容師のカットでは無いのだ。
この差は大きい。
此処がマリアンヌさんやクリスタルちゃんとの大きな違いだ。
彼女達は俺のカットを散々見てきているし、俺から何度も何度も技術指導を受けている。
美容師としてのスタート地点が違うのだ。
それにしても一番良い方法はなんであろうか?
ここは思案処である。

