わたしは駆け出したい気持ちを抑えて早足でロビーに向かった。
春也はロビーのソファに座ってこちらに手を振った。
「なんでいるの!?」
春也はきょとんとした。
「え、だって紬がせっかく俺の為に美味いケーキ買ってきてくれたって言うから」
「普通ケーキの為にここまで来ないよ!?」
「えー。車で一時間ちょいだぞ。来るだろ、普通」
「普通は来ないよ!」
春也はわざとらしく目を見開いた。
「あ! そうか。もうケーキ食べ終わっちゃったんだな。そうだよな、紬がダイエット中だから協力して俺も食おうと思ったんだけど。遅かったか……!」
わたしはその言葉に吹き出した。それと同時に、涙まで出てきた。
「まだ食べてないよ! どこまでケーキにこだわってるの!?」
「え? なんで? なんで泣くんだよ」
春也が戸惑ったようにソファから立ち上がった。そしてわたしの頭に手を伸ばした。
春也に頭を撫でられながら、わたしは鼻をすすった。
「会えて嬉しいからだよ、バカ」



