「見つからないな」
末広は廊下でそう言った。光は近くの教室にもいない。廊下にも、トイレにも、階段にもだ。すでに思い当たる場所は探した。だが、見たからないのだ。
「うんもしかして学校出ちゃったのかな」
「それだったらまずいな。車に轢かれてないか心配だ」
「ちょっと門の人に聞いてみたらどう?」
凛子が提案する。学校の門の前にはいつも門番のおじさんがいるのだ。その人に聞けばわかるかもしれない。少なくとも今学校にいるのかどうかは。
「それはいい考えだな」
そして二人は出口に向かう。
「すみません、誰が門から出ませんでしたか?」
「え、ええ一人制止を振り切って行っちゃった子がいるんですよ」
ビンゴだ。
今は学校には居ないらしい。
「どんな様子でした?」
「なんかぶつぶつとつぶやきながら歩いてました」
「それだ」
「それよ」
二人は声を合わせて言う。これでもう光確定だ。
「誰かわかりますか? すでに誰かが出たというのは教師陣に伝えたのですが」
「二年八組四番神代光です」
「わかりました」
「お待たせしました」
そして教師の山本霧江がやってきた。
「少し話を聞かせてもらってもいいですか?」
「ああ、俺としても早く光を見つけて欲しいので願っても無い話です」
末広はそう答えた。所謂winwinの関係だ。
「神代君はどのような感じでいたのですか?」
そして山本はそう聞いた。
「とにかく精神崩壊している感じでとにかくもうやばい状態です」
自分でも何を言っているのかすらわからないが、そのように言うしかできない。
「そうですか何があったのですか?」
「彼が俺には雅子が見えていると言い出して、もう手がつけられない感じでした」
光が見えない彼らには頭おかしい感じにしか見えないのだ。
それ以前に幽霊などという非現実的なもの、それを否定したいという心理が働いている。
「その後彼を現実に戻そうと思って強い言葉を使ってしまったら、狂ったように教室から飛び出してしまって」
凛子が話を続ける。実際光と話していたのは彼女だ。つまり彼女が一番状況を理解していると言える。
「なるほど、つまり要約すると、神城がまだ葛飾さんが生きていると言って、それを咎めようとしたら言いすぎてしまって、彼が暴走してしまったわけだな」
山本は話をまとめる。
「だから俺たちにも罪はあります」
光がおかしかったのは事実だが、必要以上に追い込んでしまったのも事実。クラスメイトたちに聞き回るべきじゃ無かったかもしれない。もっと温和な解決方法があったかもしれない。
「ただ、これは彼がいま異常な精神状態だから飛び出したとも言えるから君たちが悪いと言うことはないと思う。ただ、彼が心配だな」
山本は二人を慰めながら、光の心配をする。警察に補導される可能性ももちろんあるし、逆に人に危害を加える可能性も、事故に遭う可能性もある。一刻でも早く保護しないといけない。
「ですね」
「とりあえずこの問題は教師の方でなんとかしておくから、君たちはとりあえずご飯の続きを取ってきてくれ」
生徒たちに向かって優しく山本は言った。
「分かりました」
「でもあいつはまだ昼ごはん食べてなかったはずだから、もしかしたら食事屋さんにいるかもしれません」
「わかった。俺たちに任せとけ」
そう言って山本は胸をトンと叩いた。
「ありがとうございます」
凛子は感謝のお辞儀をする、それを見て末広も同じくお辞儀をする。
「はあ、どうしようか」
凛子は不安そうに末広に言う。
「どうするって先生に任せるしかないだろ、たぶん警察か親に連絡行ってると思うし」
「でももし自殺とかしてたらと考えたら」
「あいつがそんな弱い人間だと思うか? あいつなら大丈夫だ」
心配なことは変わらない。だが、親友として信じなくてはならないのだ。光の芯の強さを。
「うん」
そして二人で弁当を食べ始める。


