怜也以外の人から交際を申し込まれて前向きな気持ちにもなれていた。
剛志ならあの嫌な記憶を上書きして、あわよくば消してくれるかもしれないと。

「それ、大丈夫なの?」
「大丈夫ってなにが?」
「だって千尋、まだ辛いんじゃない?」

そう聞かれて一瞬うつむく。
けれどすぐに顔を上げた。

「辛いときもあると思う。まだ完全に傷が癒えたわけでもないし。だけど前を向きたいなって思ったんだよね」

「それで、告白してきた相手と付き合うことにしたの?」
なんだかトゲのある言い方だ。

雪菜の言い方だと、相手が誰であれ告白されればOKしたんじゃないかと聞かれているようなものだ。

さすがにムッとして「それは違うよ」と、反論した。
誰もいいなら告白されたあの場所でOKしたを出していた。

一週間時間があいたのは、ちゃんと考えていたからだ。
「それならいいけど……」