テレビの上の掛け時計を確認すると、バイトへでかけていってからまだ１時間しか経過していない。
もしかして私の様子が気になって早退でもしたんだろうか。

そう思っていたとき、隣の部屋の玄関ドアが開閉する音が聞こえてきた。
なんだ、隣の人が帰ってきたのか。

そう思ったのもつかも間、隣から水道の音やくしゃみをする音などが立て続けに聞こえてきた。
どうやらこのアパートの壁は随分と薄いらしい。

そう気がついた私はすぐに声をあげた。
うーうーとくぐもった声ではさすがに隣まで届かない。

次に体を左右に揺らして椅子を鳴らしてみたけれど、体力が消耗していてこれもうまく音が出せなかった。
どうすれば気がついてくれるだろう？

こんなチャンスはもう二度と来ないかもしれない。
絶対に、逃しちゃいけない……！

そう思ったとき汗が頬を流れてガムテープを濡らした。
濡れた箇所の粘着が少しだけゆるくなる。

これだ！！