「じゃ、俺バイト行ってくる」
怜也は大学生だと言っていたけれど、実は工場のアルバイトだということもわかった。
大学生だと名乗ったほうが私が安心するだろうと思って、嘘をついたそうだ。
だけどいまさらそんなことはどうでも良かった。
怜也が大学生だろうが、工場のアルバイトだろうが、ここから逃げ出すことができないのなら関係のないことだった。
それに私は今怜也のお金で生かされているようなものだった。
拘束されたままの1日はひどく長い。
なにもできない、なにもしない、気を紛らわせるための道具がなにもない。
ただただ怜也が帰ってくるのを待つばかり。
そして帰ってくれば帰ってきたで、地獄は続く。
いっそ舌を噛み切って死んでしまいたいと思ったけれど、口の中に詰め込まれているハンカチが邪魔して舌を噛むことも許されない。
こんな生活が一体いつまで続くんだろう。
あと数日?
それとも数年?



