「いらっしゃいませ、何名様ですか? こちらへどうぞ」
と、慌ただしくお客さんを案内してまたカウンターヘ戻ればそこには新たなお客さんが待っている。

あっちに行って、こっちに行って。
バタバタと歩きまわっている間に笑顔を忘れてしまいそうになるから、必死に顔に貼り付けておく。

やがてそれは形状記憶されて、自分が笑っていなくてもずっと口角が上がっているようになる。
「やっほー、千尋!」

バイトが始まって2時間班が過ぎたとき、約束通り鳴海たちがやってきた。
「みんな来てくれたんだぁ」
私は張り付いたままの笑顔で言う。

だけどさっきまでとはちょっと違って、その笑顔には心がこもっている。
私は友達を席に案内して、今日のオススメ料理を教えた。

鳴海たちはカラオケがよほど面白かったみたいで、ファミレスに来てからもスマホをマイク代わりに握りしめて流行りの歌を歌い始めた。
「飯沼さん」