きっと、今もその隣人は旅に出ているんだろう。
だから怜也は満を持して私をここへ連れ込んだんだ。
「ほら、食えって、な?」

少しだけ優しい口調になったかと思うと、落ちたお米を拾って私の口にねじ込んでくる。

ゴミやホコリがついた米に味は感じられず、ただ暴力から逃れるためだけにそれを食べる。

胃が悲鳴をあげて逆流しそうになるのをどうにか押し込めて、最後まで食べきった。

「それでよし。お茶も少し飲んでおけ」
斜めに差し出されたペットボトルの口から冷たいお茶が流れ込んでくる。

私はそれを喉を鳴らして必死になって飲んだ。
自分でも気が付かなかったけれど、相当喉がかわいていたみたいだ。

ペットボトルのお茶を一気に半分ほど飲み干したところで、ようやくホッとした。
私は一体、どのくらいの時間気絶していたんだろう。

食事が終わると怜也がまた私の口にハンカチを詰め込んで、ガムテープを張った。