バイトを辞めてもお客さんとしてまたここに来よう。
そう決めて帰路を歩き出す。
ザッザッと後から付いてくる音に聞こえてきたのはお店から200メートルほど離れてからだった。
ここは大通りで車の行き来も多いし、人通りもまだある。
だけど足音は私の歩調に合わせるように聞こえてきて戸惑った。
もしかしれ怜也だったら?
振り向いてそこにいる人物を確認することが怖くて全身が凍りつく。
振り向いちゃダメだ。
このまま真っ直ぐに家に帰らなきゃ……!
だけど足音は容赦なく近づいてくる。
ザッザッザッ。
少し足をこするようなどくとくの足音。
怜也はこんな風に歩く人だったっけ?
意識したことがないからわからない。
不安で胸が押しつぶされそうになったときだった、ザッザッザッという足音を立てた男性が私の横を早足に追い越していった。
スーツ姿の男性は右足が悪いようで、少し引きずっている。



