最悪、自分から彼の元へ戻っていく子もいるのだとか。
想像するだけで身震いするほど恐ろしい。

またあのトンネルの前まで連れて行かれるかもしてないと思うと、吐き気すらした。
「千尋が元に戻ってくれてよかった」
鳴海が私の体を抱きしめて言う。

「そんなに変だった？」
「変だよ！　元気ないし、目はうつろだし」

「そっか」
自分では気が付かないうちに洗脳されてしまうから、抜け出せなくなるのかもしれない。
私には鳴海や先生がいてくれたから、助かったんだ。
「千尋、バイトは辞めるの？」

「うん、そうなると思う」
怜也は私の学校もバイト先も知っている。
学校を辞めることはできないけれど、バイト先にはできるだけ近づかないほうが良さそうだった。

「そっか。頑張ってたのに残念だったね」
「大丈夫だよ。落ち込んでたら鳴海が助けてくれるでしょう？」

そう言うと鳴海が自信満々に自分の胸をドンッと叩いた。