「だ、大丈夫だから。そんなんじゃ、ないから」
ジワリと汗が吹き出して、気がつけば無理やり笑顔を浮かべて否定していた。

心臓がドクドクと早鐘をうち、気分が悪くなってくる。
もしこれが怜也にバレたらどんな矯正という名の暴力が待っているかわからない。

だからこのことは絶対に他の人にはバレちゃいけないことなんだ。
「千尋大丈夫? そんなんじゃダメだよ」

鳴海が私の肩を掴んで揺さぶる。
その瞬間、怜也に痛いほど肩を掴まれたときのことが蘇ってきた。

怒鳴られて殴られて、しびれるような頬の痛み。
「いやぁ!!」

自分でも気が付かないうちに鳴海の体を突き飛ばし、教室から駆け出していた。
ここは学校じゃなくてトンネルの前だ。
さっきのは鳴海じゃなくて怜也だ。

早く逃げなきゃ追いかけてくる。
早く逃げなきゃ捕まってしまう!

「千尋!!」
怜也が私を呼んでいる!!