「いや、帰るけど、彼氏さんが待ってるなら一緒に行かないほうがいいかなと思って」
うつむき加減に言う男子生徒に思わず笑ってしまった。

律儀なのはどっちだろう。
「そんなこと気にするタイプじゃないから大丈夫だよ！」
私は男子生徒の背中をバンバン叩いて一緒に歩き出した。

だいたい、学校内には腐るほど男がいる。
一緒に校門まで出た程度で嫉妬されていてはかなわない。
「千尋！」

校門を抜けたところですぐに怜也が声をかけてきた。
相変わらず黒い車よ横付けしていて、その視線はすぐに隣を歩く男子生徒へと向かった。

「こんにちは」
男子生徒がなんとなく気まずそうな顔つきでお辞儀をする。
「こんにちは。千尋のクラスメート？」

「うん。私がプリント出し忘れてて、付き合ってくれてたの」
そう説明している間にも怜也は助手席のドアを開けてくれる。