「もしかして千尋に届けてもらうためにわざと忘れて帰ったんじゃない?」
「そんなことないでしょ」

と、否定しながらも今考えるとその可能性もあるような気がしてくる。
じゃなきゃ、あのときわざわざ私を家まで送ったりしなかったんじゃないだろうか?

ということは、怜也はもっと前から私のことを……?
そこまで考えたとき、次の授業が開始するチャイムがなり始めて先生が教室に入ってきた。

今度聞いてみよう。
私はそう心に留めて教科書を取り出したのだった。

☆☆☆

その日もバイトは休みで怜也が迎えに来てくれる予定になっていた。
最近、放課後鳴海たちと一緒に遊ぶことができていないけれど、周りの受験に対する雰囲気が濃くなってきていたので、それもあまり気にならなかった。

鳴海は遊び相手が減って不服そうな顔をしていたけえれど、真っ直ぐ帰っているみたいだ。
「飯沼、プリント出した?」