玄関ドアへ手を伸ばしたときだった。
後方からバチバチッとスタンガンの音が聞こえてきて振り向いてしまった。

起き出した雪菜が部屋の前でスタンガンのスイッチを入れている。
「ほらね、そうやって逃げるから追いかける羽目になるんだよ？」

雪菜は悲しんでいるように見える。
自分のお人形が意思を持ち、勝手に動いているのが我慢できないんだろう、
だけど私はそれを無視して玄関を開けた。

ドアには南京錠もかかっていないし、暗証番号もない。
「待て！！」
走って追いかけてくる雪菜を振り返ることもなく、私は全力で駆け出したのだった。

☆☆☆

どれだけ走っただろうか。
雪菜が暮らすマンションはとっくに見えなくなり、辺りにはネオンが輝きだしていてようやく今は夜なのだと気がついた。

飲み屋街へと出てきてしまったようで、この時間でも人通りは多かった。