本当ならもっとじっくり観察したかったけれど、そんな暇はない。
素早く部屋に入るとグルリと中を見回した。
ピンク色のカーペットに白くて丸いテーブル。

ベッドの上の布団はちゃんと整えられている。
ウチはベッドに近づいて右手で掛ふとんに触れてみた。

ふわりとした感触がしたあと、千尋のあの甘いいい香りが鼻腔をくすぐってきた。
たまらずしゃがみこんで布団に顔をうずめて深呼吸する。

このまま千尋の香りに埋もれて眠ってしまいたい。
だけど時間がなさすぎた。
次にウチがやったことはクローゼットの中を確認することだった。

部屋はキレイでもクローゼットの中は汚い子がいるけれど、千尋のクローゼットはちゃんと整理整頓されていた。

右端にかかっている夏服の制服に気がついて心臓がドキリとする。
毎日のように千尋が袖を通していたものだ。

ドキドキしながらそれをハンガーから外して両手に持ってみる。