若くして祖父と結婚したため、食べながら歩く観光なんて経験がないのかもしれない。
それから教室内で模擬店を見てまわった。

教室内では執事喫茶やメイド喫茶の他にも美術部、文芸部の展示などがある。
どれも本格的で廊下を歩いているだけでも楽しい。
「ごめん。ちょっとトイレに行ってくるね」

祖母がそう言い、女子トイレへと入っていった。
ウチは祖母の荷物を引き受けてトイレ前で出てくるのを待っていた。

そのときだったのだ。
ウチの目の前を白黒服のメイド姿の女の子が元気に走り抜けていったのは。

女の子は長い髪の毛を高い位置でツインテールにしていて、走るたびにスカートのフリルと同じように揺れた。

甘い香りが髪の毛から漂い、残り香になった。
このときまでまさか自分が同棲を好きになる日がくるなんて考えてもいなかった。

だけど、基本的にそうなのだと思う。
相手のことを好きになれば性別なんて関係ない。