「雪菜ちゃん、好きなものを食べていいからね」
と、祖母が手渡してきたのは一万円札2枚だ。

ウチの家に負けず劣らずお金のある祖父母は、文化祭の時にまで万札を出そうとするから困る。
「おばあちゃん大丈夫だよ。ウチ、小銭あるから」

そう言って一番手前にたこ焼き屋へ向かった。
「いらっしゃいませぇ!」
と、男子生徒の元気が声。

赤いハッピを着ていて、背中には1年A組と書かれている。
屋台ごとにハッピの色が違うのは、クラスや部活動が違うからだろう。

300円のたこ焼きをひとつ買ってベンチに座り、祖母と一緒に食べた。
焼き立てアツアツのたこ焼きはちょっと粉っぽかったけれど、十分においしかった。

「おばあちゃん、こんなの食べたの久しぶりよ」
「おばあちゃんは外食と言えば高級レストランに行くからだよ。食べ歩きをしてみたらいいのに」

そう言ってもおばあちゃんは首を傾げるばかりだ。