こっちまでパニックになって相手の感情を逆なでしてはいけない。
できるだけ冷静にしていなければ。

怜也に散々暴力を振るわれた経験から、私はすぐに抵抗するのをやめた。
だけど、諦めたわけじゃない。

そんな私を見て雪菜は少し予想外のような顔をしたけれど、すぐに笑顔に戻った。
「せっかくだから、昔話をしてあげるね」

「昔話？」
「そう。ウチの過去だよ」
私はジッと雪菜を見つめる。

「ウチと千尋は本当は３年くらい前に出会ってるんだよ」
「そんなはずない！」

すぐに否定する私に雪菜が人差し指を立ててシーッと合図した。
私はそれで黙り込む。
「ウチも千尋もまだ高校生だった頃……」

☆☆☆

ウチが千尋を初めてみたのは今あから３年前。
千尋は高校２年生でウチは高校１年生だった。

「雪菜ちゃん、近くの高校で文化祭をやってるみたいだけど、行ってみる？」
そう言ってくれたのは父方のおばあちゃんだった。