そう思ってドアを開けたとき、目の前に人の体があって「ヒッ」と短い悲鳴を上げた。
見ると雪菜が立っている。

「ゆ、雪菜?」
「どうしてコーヒーを飲まなかったの」
抑揚のない声で言われて戸惑う。

「こ、こぼしちゃってごめんね?」
「こんなこと、したくなかったのに」
え?

今度は聞き返す暇もなかった。
雪菜が背中に回していた右手を突き出した瞬間、私の首筋に激しい痛みが走っていた。

バチバチと音を立てている黒い物体。
スタンガン?

そう気がついた時にはもう、私の体は後方へと倒れ込んでいた。
雪菜が頭をぶつけないようにすぐに支えてくれる。

急速に意識が飛んでいく中、雪菜は満足そうな笑顔を浮かべていたのだった。