そうすれば雪菜は本当に面接に行ったと思ってくれるだろうか……。
もしすぐに追いかけてこられたら？

そのまま捕まってしまったら？
考えるだけでも恐ろしい。
私は左右にブンブンと頭を振って悪い想像をかき消した。

試しに窓から外を確認してみる。
剛志のときは２階のアパートからだったから、窓から飛び降りることもできた。

だけどここは５階のマンションだ。
窓から飛び降りればほぼ間違いなく死んでしまう。

部屋を歩き回っていたとき、不意に足裏に気持ち悪さを感じて立ち止まった。
確認してみるとそこには茶色いシミができている。

コーヒーをこぼしたあと、しっかり拭けていなかったのだ。
今から出ていくのだから無視しておけばいい。

そう思ったけれど、なんとなく気になって雑巾を持ってくることにした。
なにか、他のことをしている間に妙案が浮かんでくるかもしれないし。