私としては一秒でも早く雪菜に出ていってもらいたかった。
「う~ん、なんだか昨日から熱っぽいんだよね」

「え?」
「今日は休もうかな」

嘘でしょ。
雪菜が家にいたら、荷物を運び出す時にバレてしまうかもしれない。
「私、今日は休んでゆっくりしてるね」

雪菜はそう言うとリビングのソファに横になってしまったのだ。
私は慌てて「それなら、ベッドでちゃんと寝たほうがいいよ」と、声をかける。
けれど雪菜はすでに目を閉じて、もう返事をしてくれなかったのだった。

☆☆☆

自室へ戻ってきた私は頭を抱えて叫びたい気分だった。
雪菜は私がこの部屋を出ていこうとしていることに気がついている。

だから、あんな風に邪魔をしているのだ。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。

グルグルと部屋の中を歩き回ってみても妙案は浮かんでこない。
私にできることは荷物を諦めて外へ出ること。