「どうしたの? 早く飲んで?」
雪菜に促されて私はギュッと目を閉じた。
飲むしかない……!

そう思ったときだった。
ツルリと指が滑ってカップが落ちたのだ。

転がったカップは横倒しに倒れて、茶色いシミが絨毯に広がっていく。
「あ、ご、ごめん!」

わざとやったわけじゃないけれど、内心ホッとする。
雪菜がこちらを睨みつけてきていたけれど、私は気が付かないふりをしたのだった。

☆☆☆

後は、雪菜に先に部屋を出てもらって、私は後から荷物を持って出ればいいだけだった。

朝ごはんは食べない。
とてもじゃないけれど、食べられない。

「本当に面接に行くの?」
出かける準備を終えたとき、雪菜が声を掛けてきた。

「うん。行くよ」
「そう……」

目を伏せた雪菜の長いまつげ。
それが微かに震えている。

「雪菜はもう出なきゃ遅刻しちゃうよ?」
いくら学校までの距離が近くても、ダラダラしている暇はない。