私の部屋には中央にテーブルがないから、雪菜はカップを直接手渡してきた。
そして私の前に座る。
「ゆ、雪菜の分は?」

「ウチは後で飲むから平気」
「そっか」

頷き、でもカップには口をつけない。
ひとり分しかないコーヒーは違和感の塊だ。

「昨日の夜は何をしてたの?」
「え? な、なにが?」

雪菜の質問に声が裏返る。
必死になんでもない様子を装ってみるけれど、緊張で不自然になってしまう。

「ごとごと音がしてたけど?」
荷造りの音が聞こえてしまっていたみたいだ。
高級マンションだからといって油断していた。

私は昨日の自分を殴りつけた気持ちになる。
「別になにも。ちょっと片付けをしてただけだよ」

「へぇ?」
雪菜がグルリと部屋の中を見回す。
客間を貸してもらっている私の部屋には、片付けるほど物がない。

それを指摘されるかもしれないと思ったが、雪菜はなにも言わなかった。