「あ、ありがとう。リビングに置いておいて」
こんな早朝にコーヒー?
違和感が膨れ上がる。

どうして?
なんで?
まさか昨日雪菜のクローゼットを買ってみたことがバレただろうか。

冷や汗が背中を流れていく。
心臓は今にも張り裂けてしまいそうだ。

「一緒に飲もうよ」
そんな声が聞こえてきたと同時にドアバーが揺れた。
ハッとして身を引くと、内側へとドアが開かれていた。

その向こうにはコーヒーカップを持った雪菜が立っている。
淹れたてのコーヒーからは湯気が上がっていた。

「ごめん、入っちゃった」
ちっとも申し訳ないように聞こえないのは、きっと気のせいじゃない。

私は無意識の内にクローゼットへと視線を向けてしまう。
あそこにまとめた荷物があることがバレたら、全部終わってしまう。

どうにかそこから視線を引き剥がして、部屋の中央に座り込んだ。