「なんだ、なにも知らないんだ?」
「お客さんはただ食事をしに来てるだけなんだから、知ってるわけないじゃん」

「でもさぁ、ものすごいカッコイイ人が来たらどんな人なのか気にならない?」
「そりゃ、気にはなるけど、それだけかなぁ」

「千尋って以外とクールなんだね」
鳴海はつまらなさそうに唇を尖らせたのだった。

☆☆☆

それからの一週間はあっという間に過ぎていった。
学校で授業を受けて、放課後は鳴海と遊んで帰るか、バイトをして帰るかのほぼ二択。

受験勉強に勤しんでいる生徒たちもいるけれど、専門学校への進学が決まっている生徒たちにはそれも無縁の話だった。

「うちら専門のオープンスクールに2回行ってるから面接免除だし、高校の成績悪くなくて推薦してもらってるから、テストも免除なんだよねぇ」

と、鳴海はクラス内でいつも自慢している。
専門に進学した後ついていけるのかどうかは、別問題だけれど。