剛志には前科があるから、すぐに特定できたそうだ。
「よかったね、これでまた捕まってくれる」

雪菜はそう言って私の手を握りしめた。
『また』という言い方をしたということは、雪菜も剛志と怜也だと思っているんだろう。

私もきっとそうだと今は確信している。
剛志が逮捕されれば、もう二度と監禁されることもないのだ。

「今日はどこかで食べてから帰ろうか」
そう言われてまだ夕飯を食べていないことを思い出した。
緊張感のせいですっかり空腹を感じなくなっていたけれど、思い出したら急にお腹が減ってくる。

「そうだね。マンションの近くにて定食屋さんなかった?」
「あぁ、和食の? あそこおいしいよ」

「じゃあ、そこに行きたい!」
わざと明るい声を出して言ってみれば、さっきよりもお腹がすいてきてグゥとお腹が鳴った。
私と雪菜は目を見かわせて声を出して笑ったのだった。