「わからない。でも千尋が被害者だって確信はなさそうだったよ」
ベッドの隣で丸椅子に座る雪菜が答えた。

確かに確信はなさそうだった。
だけどほとんどそうだとわかっていたから、声をかけてきたんだと思う。

「あの事件は全国的ニュースにもなったから、誰が知っててもおかしくない。でも、ニュースでは千尋の名前は出てなかったはずだよ」

「うん。それでも知ってた……」
高校時代の同級生なら私が被害者だと知っている子も多い。

地元での事件だったし、ショッキングだったから噂はあっという間に広まってしまったから。

ひどいことが起きたけれど、卒業時期でまだ良かったと両親が話していたのを聞いたことがある。

すぐに高校を卒業したから、今日みたいに好機の視線にさらされ、傷つけられることもなかったのだ。

「ここの先生たちは事件のこと知ってるの?」
「一応、校長先生には両親から話してくれたみたい」