先に怜也のことについて知っていれば剛志と付き合うことも、勝手に同棲を開始することもなかったのに。
周りを恨んでもどうしようもないことだけど、そう思ってしまう。
「早く、荷物をまとめなきゃ」
時計を見ると5時半だ。
剛志が戻ってくるまでにまだ1時間はあるから、十分出ていくことができる。
私は持ってきたボストンバッグに身の回りのものを詰め込み始めた。
教科書、ノート、筆記用具、化粧品。
日常に必要なものを詰め込んでいるとボストンバッグはあっという間にパンパンになった。
時間を確認すると6時を過ぎたところだった。
そろそろ出よう。
そう思って重たいボストンバッグを持ち、玄関へ向かう。
閉めておいた鍵を開けようと手を伸ばした、そのときだった。
ガチャッと音が鳴ったかと思うと鍵が回っていたのだ。
呆然としてそれを見つめていると、間髪入れずにドアが開いた。
剛志が目の前に立っている。



