それに、剛志はあのスープに口をつけていなかった気がする。
「朝のスープが飲みたい」

と言うと剛志は残念そうな顔で「痛むから捨てたよ」と答えた。
なにかを隠蔽された。

そんな気分になった。
「雪菜、ちょっと相談があるんだけどいいかな?」

雪菜との関係は完全に回復したとは言い難かったけれど、それでも相談できる相手を想像したときに一番に浮かんでくるのは雪菜だった。

「どうしたの?」
ひとがまばらにしかいない中庭のベンチに移動してきて、私は雪菜にパックのバナナジュースを手渡した。

さっき学校の自販機で購入したものだ。
「剛志のことなんだけどさ……」

この前感じた疑念をぽつぽつと説明していく。
起きたときに夕方だったときは本当に衝撃的だった。

もしかしたら剛志が私に睡眠薬を盛ったのかもしれないと思うと、もう剛志の料理を食べることはできない。
話が進むにつれて雪菜はなぜか嬉しそうな表情になってきた。