「気にしなくていいって。だからさ……」
そっと抱きしめられて、耳元に口が寄せられる。

「ずっと、ずーっと一緒にいてよ」
剛志がそう囁きかけてきて、その瞬間なぜか背筋が寒くなった。
全身に蟻が這い回っているような得も言われぬ不快感。

せり上がってきた吐き気をどうにか飲み込んで、私は「もちろんだよ」と、明るく答えたのだった。

☆☆☆

私は本当に体調不良だったんだろうか。
倒れる寸前のことを思い出してからはそんな疑念に囚われていた。

剛志や部屋がグニャリと歪んで見えていたし、声も歪んで聞こえていた。
それは体調が悪かったせいかもしれない。
だけど料理中は少しもしんどさを感じていなかったのに。

なにかおかしいと気がついたのは剛志が作ってくれたコンソメスープの存在だった。
あの時剛志は私にコンソメスープの味を聞いてきた。
だから飲んだけれど、体調が悪くなったのはその後からだった。