両腕を痛いほどに掴まれて顔をしかめた。
「ちょっと、どうしたの? なんだか今日は変だよ?」

すぐに逃げ出そうとしても腕を掴まれていてそれもできない。
剛志から感じる殺意にも似た怒りに心臓がドクドクと早鐘を打ち始める。
どうしてこんなに怒っているのか理解できない。

だけど、まだ殴られてはいない……。
自然と怜也と剛志を比較してしまう自分がいる。

怜也はこういうときんは手がつけられないほど暴力的になったが、剛は違う。
腕を掴まれているだけで暴力を振るわれたわけじゃない。

だからきっと大丈夫。
それこそが異常な思考回路で危険なのだと気がつくこともできず、私は怯えた目を剛志に向けるばかりだ。

「千尋は売女なのか?」

今、なんて……?
信じられない言葉に自分の耳を疑う。
コンビニ店員と会話していただけで売女と言われるなんて、想像すらできていなかった。