「今日は僕が夕飯を作るから、千尋はゆっくりしてて」
剛志は週に1度はすべての家事を自分で担当し、私をしっかり休ませてくれる人だった。

更に料理の腕前もなかなかのもので、簡単なチャーハンや炒めものでも味は絶品だった。
もしかしたら私よりも料理上手かもしれないが、それを言うと「ひとり暮らしが長かったからね」と、剛志は苦笑いを浮かべた。

「たぶん、大丈夫みたい」
剛志との同棲生活が一月以上経過したとき、教室で雪菜にポロリとそんな言葉をこぼした。

「え、なにが?」
今まで昨日見たテレビ番組の話をしていたので、雪菜は首を傾げている。
「剛志との同棲生活のことだよ。もう一ヶ月になるけど、全然苦しくないの」

トラウマは今のところ姿を見せていない。
そういうことを伝えたかったのだけれど、雪菜はしかめっ面をした。

「そんなのまだわからないでしょ。喧嘩とかしたら、変わるかもしれないんだし」